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空の端の方が白んでくる。

もうすぐ夜明けだ。





しばらく二人で抱き合っていたが、どちらともなく身体を離す。



「リン、そろそろ…」

「うん、完全に夜が明ける前には森を抜けた方がいいわね」



そう言って立ち上がり、

一応変装のつもりで着替えた、町娘の服と、庶民が着るような一般的な男性物の服についた草をお互いにはらい合う。






歩き出そうとした時、突然


レンが呟くように言った。









「俺さ、冗談じゃなくて…今まで城の外に出たことってなかったんだ」

「…?」



レンが遠くの方を見る。




「だから、王宮って狭い、閉鎖された空間しか知らなかった」

「うん」


「それが俺の世界の全てだと思ってた。一生、広い世界に出られることはないんだって思い込んで、勝手に拗ねていじけてた。」

「うん」


「でも、もういじけたりしない。…今度はリンが見てきた世界を…広い外の世界を見てみたい。リンと一緒に自由になりたい」

「うん」




「だからさ、リンが連れてってくれよ?自由な世界に。代わりにリンのことは俺が守るから」


「うん!一緒に行こう!レンとあたしなら、きっとどこまでも行けるわ」





レンが笑って手を差し出す。

あたしも笑って、それをとった。




もう、国王でも…スパイでもなくなったあたしたちは


二人で手を繋いで歩き出す。





遠くへ行こう。



追っ手に捕まらないくらい遠く遠く


海を超えて

砂漠を越えて

大陸を渡って



もっともっと遠くへ行こう。




きっとその先でなら、あたしたちは自由になれる。




二人でいれば、きっと今度こそ幸せになれる。




そう思った。









森を抜ける直前に


ふと見上げた空は


あたしが好きな人の瞳と同じ色をしていた。






あぁ、なんて綺麗な蒼色だろう…







この国に来て

初めてレンと出会った時に



きっとその瞬間から、あたしはその夜明け色の瞳に恋をしていたんだ。




そして


きっとこれからも、


ずっとずっと、その瞳を持つこの人に、恋をし続けるんだと思った。







「ねぇ、レン? あたし…あたしね、レンの瞳の色が夜明けの空みたいで好きよ?」




「…俺もリンが…リンの全部が好きだ」





レンが嬉しそうに笑った。






「行こう!リン!」










きっと二人ならどこまでも行ける。







きっとあたしたちの未来はこの先にある。









― end ―

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