long

□17
1ページ/1ページ





横抱きのまま王の部屋に運ばれたあたしは、

思いの外そっとベッドに下ろされた。







しばらく二人とも無言だった。










あたしはさっきのレン様の冷たい目が忘れられなかった。





初めて、レン様を怖いと思った。





どんなに他人を寄せ付けないオーラを纏っていても、

普通なら怒り狂うような、心ない言葉を耳にした時に、眉一つ動かさず感情のない人形のように無表情でいても

どんなに血の通わない悪魔の子、冷血な少年王と恐れられていても



一度だって怖いと思ったことがなかったのに







それなのに、初めてレン様を怖いと思った。











「軽率で下品な女」

と蔑まれるだろうか




それとも

「黄色の国の王の品位を汚すな」

と、この場で切って捨てられるだろうか







そう思ってあたしは、

王の顔を見ることもできず、顔をあげることすらできずにいた。











先に沈黙を破ったのはレン様だった。





レン様はあたしに静かな声で、これだけ言った。





「…リン、大丈夫だったか?何もされていないか?」





それは、

優しさに満ちた…でも怒りと悲しみが入り交じったような、そんな声だった。






「…はい」




あたしもこれだけしか答えられなかった。











「そうか…」


そう呟くように言うと

レン様はそのまま寝室を出て行った。










一人残されたあたしは、

レン様のベッドに座ったまま泣きじゃくった。


零れる涙を拭いもせずに

まるでダムが決壊したように泣き続けた。









あたしは一体何をしてるんだろう…?




あんな馬鹿な真似をして


失ったものは多いのに


結局何一つ手に入れられていないじゃないか…








いっそ

このまま死ねたら良いのに



そう思った。




.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ