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「いつから黄色の国の名誉ある近衛隊長は、嫌がる女に手を出すような下種に成り下がったのだろうな?」









男の顔が、唇まであと数センチと迫った時、

突然背後から、聞き慣れた、でも氷のように冷たい声が聞こえた。






「………レン様…?」






「こ、国王陛下!?…何故このような場所に……!?」






驚いた男の力が緩み、その隙に男の下からはい出したあたしは、

レン様に後ろから強めに引き寄せられ、肩からガウンを掛けられた。



そしてそのまま、抱き上げられる。





「レ、レン様!?」








レン様があたしを抱き上げたまま、侮蔑の混じった声で言う。





「ふと思い立って、図書館で調べ物を、と思い通りかかったのだが、随分楽しそうな声が聞こえたものでな。覗いてみればこの有様だ」





「い、いえ…王がお考えになっているようなことは決して……!!」





近衛隊長の男は、予想だにしていなかった主君の登場に、これ以上ないくらい狼狽していた。





「嫌がる私の侍女を組み敷いて、一体何をしようとしていたのだろうな?」



「いえ…ち、違うのです!!…その女が!その女が誘ってきたのです!!」






そうわめいて縋りつくその男に、レン様は見下すような視線を向けると薄く笑った。





しばらく王に仕えていたあたしですら、今まで見たこともないような、

思わずぞっとするような冷たい笑みだった。






そして、笑みを浮かべたまま、あっさり男を切り捨てる。







「下種の言い訳など聞きとうない。耳が汚れる」









男は言葉を失い、へたり込んだ。











「今、この場で、黄色の国の近衛隊長の任を解く。処罰はおって下されるものと思え」




そう言うと、

レン様は、震える私を抱き上げたまま、

へたりこむ男をふりかえりもせず、その場を後にした。




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