short

□Raining
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親父もあの女もとっくに関係は破綻していたようだが、お互いのことを干渉し合わない関係が心地良いのか、離婚したりはしなかった。

リンと離れずに済んだから、それだけは親に感謝した。

それに相変わらず二人とも遊び歩いていたから、両親ともに、俺とリンの関係に気づきもしなかったのは好都合だった。









親が帰ってこない家

俺とリンの二人しかいない部屋




一応部屋に鍵をかけて、

華奢な身体を組み敷いて、

指をキツく絡ませて、

深く深く口付けて、

俺はリンだけを求めた。


リンが抵抗しないから、それが了承のサインだと思った。


深く深く繋がって、いっそ身体が溶けて、リンとひとつになればいいと思った。







リンを義姉だと思ったことは一度もない。


だから罪悪感なんて少しも持たなかった。




リン以外欲しくなかった。



リンだけが俺の全てだった。














ある晩、いつものようにベッドでリンを抱きしめていたら、突然


「あたし、夜の海に行きたいの」


なんて言い出して




だから、そっと家を抜け出して、二人で海に向かった。








夜の海は誰もいなくて、静かで綺麗で…

しばらく二人でぼんやり海を眺めた。





「リン、愛してる」


そういうと、君は相変わらず、肯定も否定もせずに曖昧に笑った。


「…本当に愛してるんだ」









遠くで微かに雷鳴が聞こえた。





「ねぇ、リンそろそろ…」


手を繋ごうとしたら、するりとかわされた。





「どうしたの、リン?もうスグ雨になるよ?」


そんな俺の声が聞こえていないのか、リンは黙ってこちらを見ている。






ポツ…

顔に雨が当たり始める。





マズイ、本格的に降ってきたな



「ねぇ、リンってば」






突然、俺の言葉を遮って、リンが静かに口を開いた。




「…もう終わりにしましょ?」


「…え……?」


「こんなこと、今日でおしまい」




君が何を言っているのかわからなかった





「え?なんでだよ!?どうしてだよ!?」


リンは答えない。


「嫌だ!!こんなにリンを愛してるのに!!なんでだよ!?なんでそんなこと言うんだよ!!何が足りないんだよ!!?」


滑稽なほど焦って、衝動に任せて、ただただ叫んだ。






雨が一層強くなる。





「…レン?…貴方は、本当はあたしのことなんか愛してないの」



「…違っ…!!」

「違わないわ」



残酷な程優しい声で、諭すようリンはいう。



「貴方はあたしを…現実から逃げる口実にしてるだけ」



淀みなく続く言葉はまるで流れる川のようだ。



「誰にも必要とされなくて、誰にも愛してもらえなくて、淋しくて、苦しくて、どうしようもない気持ちのはけ口にしてるだけ」

「違うっ!」





「他にあたししかいなかったから、あたしを愛してるって錯覚してるだけ」



「違う違う違うっ!俺、本当にリンを愛してるんだ!」


涙でぐちゃくちゃになって叫ぶ俺に






「あたしを愛してるなんて言って…貴方が本当に愛してるのは自分だけよ…?」


そう言って、君が泣きそうなくらい綺麗に微笑んだ。











「…だから、ね?もう終わりにしましょ?」









嫌だ

嫌だ

嫌だ



リンを失いたくない

一人になりたくないのに…






あぁ、どこで……俺は愛し方を間違ったんだろう…?








紫色の空に雷鳴が轟く










止まない雨音が

君の声と俺の声を

かき消していく





君が最後に言った言葉がわからなくて

ずぶ濡れの俺は

ココで立ち尽くしたままでいる






「さようなら」






そう言って歩き出した君は



きっともう



ココへは戻ってこないだろう








― end ―
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