沖田受け

□あのひと
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今日の最後の授業が終わるかという時突然雨が降り出した。
サイアク。この寒空の下濡れて帰ったら確実に凍死する。

チャイムがなると忽ち騒がしくなり、一気に教室は人もまばらになった。
なぜか皆傘を持っているらしい。
そうか、そういう予報だったわけ。

俺は天気予報やニュースなど見る習慣もないので、時々こういうことが起こる。

窓際にぼーっと突っ立って外を眺めていると、カラフルな傘の沢山の群れがはしゃぎながら校門の方へ向かっていくのを見た。

そして目を上げると、向かいの棟の二階の渡り廊下を銀時がだらだら歩いているのも見た。
彼もたった今雨に気づいたようで、丁度俺の向かいあたりで立ち止まって外を眺めだした。

そしてお決まりのように目が合う。

俺は毎週この時間銀時がそこを通ることを知ってるし、彼も俺がこの時間窓際に突っ立って外を眺めていることを知ってる。

彼のことが気になり出したのはいつからだ?

登下校、体育の授業、昼休み、廊下、気付くとその目立つ銀髪を目で追っていた。
俺は同級生の顔も覚えていないタイプだけど、体格から多分上級生だろう。
基本的に目立つのだ、あの人は。

それでその気怠気な目付きや、大人になりかけた男らしい体躯を持て余しているような仕草がものすごいエロいと思った。

男に対してそんなことを感じたのは初めてだったので多少戸惑いはしたが、エロいもんはエロいんだから男だろうが女だろうが関係ない、俺はあの人に触られてみたい。と思っていた。


それでも、一度も話したことはなかった。接点ないんだから当たり前だ。でもいつからか、あの人が毎週この時間ここを通ることを知ってからは、窓際に立って飽きもせず眺めた。

はじめは向こうも偶然だと思っていたらしい。
俺としてもそこまで積極的になれるほど惚れ込んでいたわけではないので、向こうがこっちをちらっと見やるようになってからは、別に俺はあんたを待ってる訳じゃなく外を眺めているだけだとでも言うように、あの人が通り過ぎるまでひたすら下を見たりとにかく目が合わないようにがんばって、彼が通り過ぎたタイミングで急いでその背中を見つめた。

でもある時、ばれた。
いつものようにあの人が通り過ぎた後の背中をぽーっと見つめていると、なんの前ふりもなく、あの人が0.1秒の速さでこちらを振り返って俺を見たのだ。そんでバッチリ目が合った。

俺は焦るどこじゃなく、その仕草が妙に芝居じみて馬鹿らしくてツボに入ってしまい、目が合った瞬間吹き出してしまった。

そしたらあの人もちょっと笑って、右手をひらひらさせて去っていったのだ。

カッケェ。あれが上級生の余裕か。
それで俺はもうすっかりやられてしまった。

そんでなんで俺があの人の名前を知ってるかというと、あれは数週間程前のことだった。

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