沖田受け

□劣情1近沖side
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こたつで下らない恋愛ドラマをなんの気なしに見ていると近藤さんがさむいさむいと騒ぎながらやってきて、わざわざ俺の横に体をねじ込んできた。
「狭ぇです」
そちらを見もせずもくもくとみかんの皮をむきながら言うと、
「だって寒すぎるんだもん。総悟お前温かいな、ちょっとくっつかせてよ」
近藤さんは冷え切った身を一層寄せてきた。


俺は近藤さんの甘い体温を感じて一瞬身を固くしたが、すぐにいつもの飄々とした態度で
「…横が狭ェんで…、何だったら後ろに来たらどうですかぃ」
となんとはなしに言ってみた。
「えー、いいのぉ。じゃあそうしちゃおー」


思ったとおり近藤さんは俺の下心に気付きもせず俺を後ろから抱きかかえるように座りなおし、俺の頭に頬を擦りつけ、湯たんぽ湯たんぽとはしゃぎたした。
そういえば近藤さんとこんなに接近し触れ合うのは数年ぶりなんじゃないか。
昔は近藤さんにこうされると丁度すっぽりとはまって収まりがよかったのに、今じゃ俺も近藤さんと頭一つ分しか変わらないから、少し無理がある体制になった。
傍から見れば18の男がこんなことをされているのは相当に違和感があるだろうが、近藤さんはそんなことはお構いなしといったふうで、ほっとした。
ふいに近藤さんがみかんを引き寄せようと俺の頭の横から両手を精いっぱい伸ばした。だが後ちょっとのところで届かない。
一瞬抱きしめられるのかと思い焦ってしまった。
なんだか癪に障り、俺は近藤さんの両腕をがしっとつかむと、そのまま自分の体に巻きつけ抱きしめさせた。

「あったかいですかい」
「なんだ総悟、今日はやけに素直だな。ガキの頃に戻ったみてえ」
「確かにあの頃は俺ずーっと近藤さんにひっついてて」
「ほんとは今でもああやって甘えてえんだろ。お前には無理させちまってるからな。 甘えたい時はいつでも甘えていいんだぞ。」
「…近藤さんがいいなら」
「おお、そうしろ。ほんと可愛いやつだな総悟は。」


俺は赤面した顔を近藤さんに見せたくなくて俯いた。するとどうしたかと近藤さんが俺の顔を覗き込もうとしたので、更に顔を背けると近藤さんは面白がってもっと顔を寄せてきた。


後ろから抱きしめられたまま耳に吐息がかかるほど接近されて、顔は熱いし完全にテンパってしまった。

「総悟君どうしたのかな~?」
「…ちょっ やめてくだせえって」
「もしかして照れて」「そっ…」

バッと顔を近藤さんの方に向けた瞬間、唇に柔らかい熱が伝わって、一瞬唇が重なってしまったことに遅れて気付いた。
思考が停止し、完全に固まってしまった俺の前で、見ると近藤さんも乙女のように口に手を添えて頬をぽっと染めていて、なぜかそれを見た瞬間吹き出してしまった。 
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