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□レシピはググりました
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翌日ダッシュマックスは仕事が休みだった、スカイマックスは昨日通りに出勤で家に居ない。昨日の夜の家に見つけておいたチョコブラウニーのレシピをプリントアウトし、こまめに確認しながら材料を揃えていく。刻むとかめんどく背、バターとか手にくっつくじゃん、あ、くるみって意外とうめぇと思いつつ手順通りに事を進める。チョコを刻みボウルに入れ、卵をとき、バターを溶かし、混ぜ合わせ、クルミを入れて更に混ぜ、クッキングシートを敷いた型の中に流し込み、表面をならしてオーブンに入れ、スタートボタンを押す。
産まれてこの方○○万年、自分でホットケーキ以外の焼き菓子を作った経験なんか皆無のダッシュマックスだ。チョコを刻むのだって苦戦した、レシピの分量のチョコを全て刻むのに結構な時間を費やした、お菓子作りが得意な奴なり趣味な奴は居るけど、正直尊敬するなと思いながらチョコを刻み、粉をふるい、クルミも大きめなものは刻み、湯煎用に湯をわかし、と慣れない作業をこなしていくのは疲れた。俺考えて行動するの苦手なのかもなーって思う。戦うときだって、頭脳戦よりもがんがん攻めていくタイプだし、あぁ俺ってこういう作業に向いてないんだなって思い知らされる。
「まぁ、そこそこ食える仕上がりなら良いか」
自分用だしさって。自分で食べるならあぁ思ったより美味かったな思ったよりまずかったなって個人の感想で済むから。スカイマックスにあげるなら美味しい方が良いに決まってるけど、きっとチョコに飽いてるからあげても喜ばれないだろうな、と。俺はチョコは断ってるし、菓子は好きだから自分で食っちまえば良いかなと。そんな事を考えているうちに焼き上がりを知らせるアラームが鳴り響き、ダッシュマックスはオーブンを開けた。
漂ってくるチョコの甘い匂いに表情がほころんだ。オーブンから型を取り出し、楊枝を刺して中まできちんと焼けている事を確かめ、型から取り出す。綺麗な焼き上がりだ。手頃なサイズの包丁で均等に切り分け、二切れを皿に盛って自分の机に持っていく。焼きたてほかほかのブラウニーだ、切り口からほのかに湯気が立つ。美味しいかな?フォークで切り分け、ぱくんと一口。
「あ、うめぇじゃん」
普通に美味しい、人にあげても文句は言われないだろう。あれ、自分用に焼いたのに何人にあげる事考えてんだろと思いながら食べ勧める。チョコの分量は結構なものだったが、砂糖を使っていないせいか思ったほど甘くはない。時々混じるクルミの食感と味がいい。
「……ただのチョコより、甘くねぇや。うめぇけど」
そういえば俺が使ったレシピって砂糖無しでもありでもいけるレシピだったんだよなぁ、あれ俺砂糖用意してたじゃんなんで入れなかったんだ、とふとした瞬間自分の作業の穴に気付く。ダッシュマックスが使ったレシピは普通に作るなら砂糖無し、甘くしたいときはこれくらい砂糖を加えてくださいという表記がなされたもの、砂糖は使っても使わなくても美味しく作れる内容だった。ダッシュマックスは甘いものが好きだから砂糖を加えるつもりで準備もしてあったのに、作る時、それを入れなかった。
「……なんでぇ、結局彼奴意識して甘さ控えめで作ってやんの」
まぁ、そんなこともあるか。なんて思いながらちょっと甘さが足りないブラウニーを食べていく。今度作るなら自分好みの甘い味にしてやるんだと思いつつ、口の奥でクルミを噛み砕いた。ナッツ特有のまろやかな味が広がって、これでも上出来だなと自分を褒める。おかげで結構楽しい休日になった、荒いものは面倒くさかったけど。
夜、遅い時間帯にスカイマックスは帰ってきた。ただいまという言葉が聞こえて、ダッシュマックスは夕食の支度をする。出来ればご飯はスカイマックスと一緒に食べたいのだ、お腹はすいたけど、スカイマックスが帰ってくるのを待っていた。ご飯を温めて、スープを温めて、サラダを盛って。
「お帰りスカイ、疲れたろ」
「あぁ」
「まぁ、適当に食えや」
「そうするさ」
いただきますといってお互いに食事を始める、食事中の会話と言えばとりとめもないような事ばかり。今日レイカーブラザーズが、とか、エクスカイザーの書類の処理量が半端無いとか職場であった事をぽつぽつと。エクスカイザーのロッカーの中に大量のチョコが詰め込まれてたんだよなぁ、あぁあいつ美人だもんなぁ、宇宙警察屈指のもて男だもんなぁ、とか言いながらスープを一口。
自慢じゃないが、カイザーズの収チョコ率はかなり高い。レイカーブラザーズは可愛らしいと人気があるし、ドリルマックスも目立ったファンは少ないが水面下で人気を集めているらしく、ロッカーにチョコが入っているのをよく目撃している。
「エクスカイザーの奴、いつかチョコで埋まるんじゃね」
「ありえるよな、正直」
「カイザーズのルームがチョコまみれ」
「やめろよなぁ、実際デスクの中にチョコが仕込んでであって書類が駄目になったことあったろ」
「あったな、よく覚えてるなスカイ」
毎年この時期は何かしら起こるよなぁと呟きながら夕食を食べ終えると、何か飲み物が欲しかったのかスカイマックスが冷蔵庫を開けた。そこに、昨日までなかったものが。
「なんだこれ」
「あぁ、それ? チョコブラウニー」
「市販品じゃないな、お前が作ったのか」
「ん、まぁね。自分用に」
そしたら露骨に残念そうな顔をしてスカイマックスは言う。
「俺にはくれないのか」
「は? お前、甘いもん苦手だし、チョコには飽きてんじゃ」
「あのなぁ、俺が本命のお前と他の女子からの貰い物一緒にするとでも?」
「……まじで?」
「お前が作ったなり買ったものならなんでも受け入れるさそりゃあ」
「……じゃあ、俺と一緒に食うか。コーヒ入れる?」
「あぁ、頼む」
あぁ、今年は結構良いバレンタインになりそうじゃん。こりゃ作ったかいがあったや。スカイマックスに食べてもらえる事を嬉しく思いながら、ダッシュマックスはブラウニーを切り分けた。

「味は?」
「ん、美味いじゃん」
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