GZ

□つかみたいつかめない
1ページ/1ページ

風や空を飛ぶことが好きで、気が向けば背に持った翼で手の届かない場所まで飛んで行ってしまう自由なやつ。
表情はいつも一定で、とても無感情にも見えるけどよく見てみると細かに表情を変化させる感情豊かなパンが好きなやつ。
簡単に捕まえられそうなのに、上手い具合にするりするりと逃げてしまう。意図して逃げているのか、それとも無意識なのか解らないけどなかなか捕まらない。
そんな雲みたいなジャイロゼッターを、GTーRは好きになってしまった。

『ブラック、ウイングロードを知らないかい?』

日産騎士団の屋敷内にウイングロードの姿が見えない。食堂や図書室で見たとか言われ、その場所を巡ったが既に立ち去った後。
ウイングロードはいつもそうなのだ。居たと言われた場所を巡っても既にいない、途中から何処に行ったかも解らなくなってしまう。
弟であるBlack editionにきも聞いたが、返答は

『知らないなぁ』

その一言。GTーRは少しだけ肩を落とす、屋敷内に居たもの全員に聞いて結局見つけられなかったのだ。
恐らくまた空へ行ってしまったのだろうと思うと、少し気落ちする。

『ごめんね兄様』
『いいよ、ブラック』

ウイングロードの行動なんて誰にも読めない。山をはったってそれをことごとくかい潜って違う場所に居る、そうかと思えば背後に居たり。
廊下の窓を開けて晴れた空を見上げる、風も強くなくてウイングロードにとっては飛びやすい気候だ。

『また空か』
『兄様、とても悔しそう』

僕にも空をかけれる翼があれば良いのにとGTーRは思う、そうすれば空へ行ってしまったウイングロードを追える。

『兄様も苦労するね、あの気まぐれな人に惚れちゃうなんて』

ブラックの言葉にGTーRは苦笑して頷く、恐らく日産騎士団で一番恋だとかに無頓着で鈍く思い通りにならない奴を好きになってしまったのだ。
これからGTーRの感情や行動は、かなり空回りしたり無駄骨に終わることが多くなるだろう。
それでも、GTーRはウイングロードを追うつもりでいる。ウイングロードが好きなのだ、一緒にいたいと思うのだ。返事は期待できないが告白したいのだ。

『彼、愛とかに鈍そう』
『一番そういうのに靡かなさそうだね』





つかみたいつかめない





今はまだ、自分から見れば掴みたくても掴めない蜃気楼みたいなウイングロードだけど、いつかその手を取れるところまで行ってみたい。

『兄様の所に来てくれると良いね』
『そうだね、いつか来てくれると良いな』

もう一度空に目を向けると、空に溶け込みそうな色の羽を羽ばたかせて、光の中を自由に翔るウイングロードの姿が見えて、少し表情が綻んだ。

いつか彼の、お気に入りの止まり木になれますように。





おまけ

エ『……円卓会議のことはウイングロードにも知らせてあった筈だよな』

フ『わらわが伝えたぞ』

ブ『じゃあなんで来ないの?』

マ『また忘れてるゲコ』

G『そうだと思ってさっきから電話かけてるんだけど繋がらないんだ』

シ『おや……携帯の故障だろうか』

G『さぁ、あ、スバル城から電話だ。もしもし……えっ』

エ『(何事だろうか』

G『あー、解りました。すぐそちらに向かいます』

ブ『兄様、何があったの』

G『ウイングロードの奴、スバル城周辺の森で迷子になってたらしい』

フ『は?』

G『城の方で保護したから迎えに来てくれと』

エ『そうか……』

G『だからちょっと行ってくる』


GTーRはスバル城からの連絡を受け、ウイングロードを迎えに屋敷を出た。
夕暮れ時とあって空は赤みを帯びつつも暗く、冷たい風が吹いていた。
飛べる癖にスバル城周辺の森で迷うウイングロードに少し苦笑し、GTーRはスバル城へ向かった。
鬱蒼と繁る森の入口に、案内役のエクシーガ2.0i-sが一人佇み、やってきたGTーRを城へと誘った。

『ウイングロード、迎えに来たよ』

ウイングロードは城門の上に腰を降ろしていた。吹いてくる風を受けて、心地良さそうに目を細めている。寒くないのだろうか?

『ウイングロード』
『……ん』

大分間を置いて返事を返したウイングロードは、バイザー越しにGTーRを見下ろした。

『帰るよ』
『わかった』

ぽてっと落ちるように飛び降りたウイングロードは、傍らにいたエクシーガに軽く礼をしてGTーRの元へと歩いてきた。
そして、自らGTーRの手を握ってきた。

『きっと私はまた迷うから』

迷うのは嫌だといって、ウイングロードはGTーRの手を握る指に力を込めた。
その指の感触が、少し嬉しい。





支部にあったじってぃー×ういろうにホアッ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ