猫と王冠

□君と白昼夢
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君 が ク ス ク ス 笑 う 。


神様も見逃すPM2:00。
天気は快晴、日差しはとても穏やかで、窓からブラインドの隙間をくぐり抜け、床にストライプの影を作る。
平日の昼間らしく、僅かに開けた窓の5センチほどの空間からは、心地良い風が流れ込んでくる。
外からの雑音はほとんどない。


此処は都心から離れた場所に位置するマンションの一室……分かりやすく言えば、僕の部屋。
住み始めてから日はまだ浅く、家具だって必要最低限にしか揃えていない。
そして部屋全体を見渡せば、真っ白な壁に、真っ白なベッド、波打つシーツも当たり前に真っ白、白、白、白、しろ、シロ。
そうだからといって、白が死ぬほど好きなわけじゃない。
でも嫌いじゃいないし、どちらかというと好きな色ではある。
けれど、それよりもただ単純に、生活感という言葉を嫌うがために選んだ色なだけ。


だって、ね?


生活感なんて現実[リアル]なんか、君と過ごす時間には全然似合わないでしょ?
反対に例えるなら、そう。
空に浮かぶ雲に乗るみたい。
夢のようで、幻のようで、……でも、事実として此処にあるんだ。そんな君との時間はいつだって、夢の中にいるようで、恐ろしいほど心地良い。


「ねえ?」


含み笑いをした君がシーツの間から、顔を覗かせる。
何か企んでるの?って聞きたくなるような悪戯っこの表情[かお]。


「なーに?」
「なんでもなーい」


ふふって、君が顔を緩める。
それはそれは言葉で言い表せないくらい可愛くて可愛くて可愛くて、何だか食べちゃいたくなる……って、さっき何回か戴いちゃったんだけど。


「太陽きもちーね」
「まだ昼だもん」
「そうだね。何かお腹空いたー」


脈絡の無い会話の途中で、君のシーツから、にょきって白い腕が生える……ソレがそのまま綺麗に伸びて、日差しを受けて、反対側の白い壁にシルエットが浮かぶ。
僕はその影に目を走らす。




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