頂・捧

□守りたいのは
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「恭弥さん、そろそろお昼にしませんか?」
「そうだね、この辺で…」

突如殺気を感じ取り、雲雀は言葉を止めた。狙われているのは間違い無く隣を歩く綱吉だ。
当の本人は安心しきっているのか、殺気にまるで気付いていない。

『どうするかな。』

敵の姿を見付けないことには、どうすることもできない。綱吉の肩を抱き寄せて、雲雀は辺りを見渡す。
しかし、入り組んだ路地に身を潜めているのか見付からない。その間にも、綱吉に憎悪が向けられ続ける。

「恭弥さん…」

綱吉も気付いたのか、慎重に周囲へと目を向けた。だが、やはり何処に居るのかは分からない。
綱吉の額を一滴の汗が伝う。繋がれた手にも力がこもった。綱吉の右手は、既に懐に入れた銃へと伸びている。

『綱吉は絶対に僕が守る…』

雲雀もいざという時のために匣へと手を伸ばした、丁度その時だった。
綱吉の背を狙う銃口が視界の端で黒光りを放った。もう既に撃つモーションへ入っている。
普通にしていたのではまず間に合わない、回避不能だ。

「綱吉ッ!!」
ズガァァァアアン!!!

雲雀の叫び声と銃声はほぼ同時と言って良かった。

「うぐぐ…がッ…」
呻き声を上げて倒れたのは、綱吉では無く男の方だった。利き手と足を貫かれたため、銃を持つ事も逃げる事も出来ない。
敵をどうにか倒す事が出来ても、綱吉には息を吐く暇は無かった。

「恭弥さん!!!」

綱吉は右肩からおびただしい量の赤い鮮血を流す雲雀に絶叫した。
雲雀は発砲より少し早くに、自分と綱吉の立ち位置を人間離れしたスピードで入れ替わり、盾となっていた。
その際に、綱吉は敵の居場所に気付き敵を倒せたのだが。

「ど、…して、きょ…やさん……」
「体が、勝手に…動い、た、んだ…泣くん…じゃ、ない…よ…」
「きょーやさん?ぇ、やだ…目、開けて下さいよ?ねぇったら…恭弥さん!!!」

綱吉に寄りかかったまま、雲雀は目を閉じる。

「やだ…誰か、恭弥さんを…!」

パニックを起こしながらも、頭の中のまだ冷静な部分でなんとか本部に助けを求めた。

「リボーン!!恭弥さんが……恭弥さんがッ!!!!!」

そこから先、何も綱吉は覚えていない。
ただ、携帯に向かって何かを叫んでいたのは確かだった。
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