パラ

□アルビレオ
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「沢田さん、パスいったよ!!」

クラスメートの声に振り返ると、ボールが眼前にまで迫っていた。オレはこんな球を取る術なんて持ち合わせてない。
そんなわけで、バスケットボールは見事にオレの左頬にヒットした。


『アルビレオ 〜序章〜』


「いたたたた……」

体育館の堅い床に打ち付けられた。凄く痛い…ボールが当った時の衝撃で、オレの体は簡単に後方へ吹き飛んでいた。
でも誰も大丈夫か、の一言もかけてくれない。気遣いの言葉なんて誰もくれない。
頭上から降ってくるのはいつも決まって罵声か呆れた声だけだ。

「またー?」
「たのむよ沢田…」

言われたところでどうにかなるわけなんて無くて…その後も授業が終わるまでに何回もミスを積み重ねた。
だから体育は嫌いなんだ……


「あんたのせいで負けたんだからねっ!」

そう、オレのミスでチームは惨敗。悪いのは間違えなくオレなのでごめんと一言。
結局負けたオレ達のチームにはモップがけを言い渡された。

「とゆーことでおそうじお願いね?私達お昼休みは色々と忙しいから」
「えっ!?」

勝手な事を言い出すクラスメートに私は慌てた。このただ広い体育館を一人で掃除しろというのか、冗談じゃない。

「んじゃたのんだわよー」
「ファイト、ダメツナ」
「ちょっ、まってよ!!」

本気でオレ一人に押し付けるらしい。確かに…確かに負けたのはほとんどオレのせいだけど、そっちだって少しはミスしてたじゃないか!!!
でも、言い返せない。そんな自分が情けなくて仕方なかった。

「あの子、本当にダメダメよね」
「テストは入学以来全部赤点って話よね」
「スポーツはダメツナのいるチームはいつも負けだしね」

呆然と立ち尽くすオレを残して、ひそひそと耳打ちし合って去っていく。彼女達がまるで自分に聞こえるように囁いているようだった。
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