パラ
□月夜の夢
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「それじゃ、また月曜日ー」
「お気をつけて!!!」
「おう、また月曜日な!」
獄寺・山本の2人と駅で別れた帰り道。もうとっくに日は沈み、辺りは無数の星が輝いていた。
『月夜の夢 U』
冬の夜空は星が綺麗に見えると言うが、今夜はまさにその通りだった。星達の光は心に落ち着きをくれるようだった。
『あとは帰るだけ。大丈夫、何も起きない。』
昼間の事を思うと不安になったが、杞憂に過ぎないという結論を出し、家路を急いだ。
はずだった。しかし、実際には同じ所をグルグルと歩いているだけだった。
可笑しい・・・いつもならとっくに家に着いている筈なのに・・・綱吉は徐々に焦り始めていた。
どうにか自分を落ち着かせようと夜空を仰ぎ見るが、先程まで自分の存在を知らせるように輝いていた星達の姿は何処にも無かった。
『まさか・・・!?』
勢いよく後ろを振り返ると、赤い月が不気味な光を発してこちらを見ている。夢に何度も顔を出したあの月だ。
『そんな・・・そんな事って・・・』
あまりの絶望感に綱吉は一瞬、我を忘れていた。第三者の声を聞くそのときまで。
「クフフ・・・初めまして、ボンゴレ・沢田綱吉。」
悪夢で見た顔、聞いた声が今まさに綱吉の目の前にあった。ヤバイと分かっていても体が動かせない。
と言うより自分の意思で動かすことが出来なかった。自分の身体だと言うのに指1本としてまともに動いてくれない。
「僕は六道骸。君に流れるボンゴレの血を貰いに来ました。」
「ぇ・・・?何を・・・」
―言ってるんだ―
発しようとした言葉は淡々と話す骸を前に飲み込んでしまった。
「君の先祖にあたる人間達は必死にその血を隠していましたよ。僕達吸血鬼に見つかったら最後。血を吸い尽くされ干からびるか、死ぬまで閉じ込められて飼い殺されるかのいずれかでしたからね。」
綱吉をよそに骸と名乗った少年は着々と話を進めていく。当事者の筈であるのに蚊帳の外と言った感じだった。
「さて、ここからが本題です。従来通りに君を殺してしまってもいいのですが・・・」
今まで前髪で隠れて見えなかった右目が風に髪が舞い上げられた事によって姿を現す。その赤い右目に見つめられると、全ての神経が麻痺してしまったかのように少しも動けなくなった。
さっきまでの恐怖からの硬直とは訳が違った。
綱吉は全身の力という力が抜け、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。力の入らない身体をどうする事も出来ないでいると骸は目の前まで歩み寄っていた。
「君は殺すのに惜しい。はっきり言って僕の好みです。」
にこりという擬音でも付きそうな笑みを浮かべて、更に骸は綱吉に詰め寄った。
「だから僕と契約しましょう。」
骸の瞳の効果で綱吉はすでに何の抵抗も出来ない状態だった。指一本は疎かぼやける視界のピントを合わせることすら困難だった。
『もう・・・駄目だ・・・・・』
綱吉が諦めて力なく瞼を閉じたその時、漆黒が駆け抜けた。
新たなる介入者の出現、それは更なる波乱を招く・・・・・
To be continued.....
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