パラ

□天使墜落
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城の中は、薄気味が悪かった。灯りなんて者はほとんど無く、暗い廊下がずっと続いていた。
そこを、炎の推進力を使った高速移動とも呼べる飛行で突っ切っていく。
程無くして、ひらけた場所へ辿り着いた。綱吉が床に足を着けると、途端に周りが明るくなった。
暗かったから分からなかったが、そこは広間のようだ。奥まった所には玉座と思しき物があり、長い足を組んで座っている。
ダークブルーの髪に色の違う目、間違いなく六道骸本人だ。

「クフフ、よく来ましたね。待っていましたよ。」

独特の笑い方をする骸を完全に無視して、いきなり殴りかかる。

「おやおや、いきなり殴りかかってくるとは・・・・・」

しかし、その拳は骸に当らなかった。

「随分とおいたが過ぎるんじゃないですか?」

先程まで綱吉の目の前にある玉座に座っていた筈なのに、骸は綱吉の腕を後ろから絡め取っていた。

そのまま少し力を込めると、綱吉の口から小さな呻き声が漏れる。骸のほうは相変わらず笑みを浮かべている。

「ぐっ!!離せ・・・ッ!!!」

どんなに必死な思いで身をよじって骸の腕を振り払おうとしても、ビクともしない。それどころか、骸は片手だけで綱吉の両腕を戒めた。

「そういえば、天使は翼の付け根が」

綱吉が身に纏っていた衣服も捲くり、ツッーと骸の指が綱吉の翼の付け根にあたる部分をなぞる。

「弱点でしたよね。」

途端に綱吉の肩がビクビクと跳ねた。同時にガクリと全身の力が抜け落ちる。炎の翼も体の中に引っ込んでしまう。

「よせ・・・やめっ・・・んんっ!!」

翼が引っ込んでもなお、翼があった場所をなぞり続けた。綱吉のか細い体はガクガクと震える。

「そうだ、良い事を教えてあげましょう。君は知らされていないかもしれませんが、生贄として僕の元に送られたんですよ。」

綱吉の目は、驚愕で大きく見開かれた。鮮やかなオレンジをした目が動揺で揺れる。

「1人の同族の命を犠牲にして国を・・・いえ、自分達の命を守る。全く醜い話だ。」

シュ――煙を上げて額の炎が消滅した。骸が告げた真実は、綱吉の決意を砕くのに十分すぎる威力を持っていた。
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