パラ

□叶わぬ恋と知りながら…
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困惑していると、心地よいアルトが耳に届いた。声の方を見て、オレは焦りで蒼くなっていた顔を赤くした。

「ヒバリ、さん・・・すみません、遅刻しちゃってその・・・門を開けようと・・・」

事実を述べると、良い獲物を見つけたとばかりにヒバリさんは笑った。
綺麗な笑みなのに、物騒さが漂っているのは何故だろう。
そんなの答えは簡単。オレが遅刻した(違反者だ)からだ。

「君、今回で遅刻・・・20回目なんだけど。」
「はい・・・」

言い方はぶっきらぼうな感じなのに、声色は何処か楽しそうだ。
普通の人なら身の危険を感じるところだろうが、オレはヒバリさんに見とれていた。
そのせいか、返事も曖昧になってしまう。顔が赤かったかもしれない。
でも、オレは自分の身におきている事に全く気付いていなかった。
そんなことどうでも良いくらいヒバリさんに見とれていた。

「・・・・・・・だよ。良いね?」
「・・・・・ぇ、ぁッ!ごめんなさい!もう一度お願いします!!!」

オレは焦って頭を勢いよく下げた。完全に自分の世界に入っていた。
そのせいでヒバリさんが何を言ったのか聞き逃してしまうなんて・・・・・どうしよう、殴られる・・・かな?
恐々と顔を上げると、ヒバリさんとばっちり目があう。怒ってはいないようだ。
どちらかと言えば・・・呆れてる?そんな感じだった。
長い黒髪がふわりと風で巻き上げられて、静かに揺れる。
オレの癖の強い髪も、少し風に煽られた。

「だから、“放課後に応接室に来るんだよ、良いね?”って言ったんだよ。」
「わ、分かりました!!」

まさかの呼び出しに、オレの心臓はドキドキと煩く鳴っていた。
どんな形であれ、憧れの、ヒバリさんの領域に呼ばれたのだ。
顔に出さないようにする事で精一杯だった。

「そういう訳だから、もう行きなよ。」

ヒバリさんはあれだけオレが押しても引いても、少しも動かなかった重い門を片手だけであっさりと開けてくれた。
オレ程では無いにしても、あの細い腕の何処にそんな力が・・・

「何してるの。早くしなよ。」

ちょっと不機嫌そうな声で言われた。

「す、すみません!ありがとうございます!!」

勢い良く礼をして、オレは校舎に向かって走った。
1時間目の授業はまだ始まって五分くらいしか経っていない。


「沢田綱吉…やっぱり面白い子だね。」
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