パラ
□叶わぬ恋と知りながら…
2ページ/5ページ
困惑していると、心地よいアルトが耳に届いた。声の方を見て、オレは焦りで蒼くなっていた顔を赤くした。
「ヒバリ、さん・・・すみません、遅刻しちゃってその・・・門を開けようと・・・」
事実を述べると、良い獲物を見つけたとばかりにヒバリさんは笑った。
綺麗な笑みなのに、物騒さが漂っているのは何故だろう。
そんなの答えは簡単。オレが遅刻したからだ。
「君、今回で遅刻・・・20回目なんだけど。」
「はい・・・」
言い方はぶっきらぼうな感じなのに、声色は何処か楽しそうだ。
普通の人なら身の危険を感じるところだろうが、オレはヒバリさんに見とれていた。
そのせいか、返事も曖昧になってしまう。顔が赤かったかもしれない。
でも、オレは自分の身におきている事に全く気付いていなかった。
そんなことどうでも良いくらいヒバリさんに見とれていた。
「・・・・・・・だよ。良いね?」
「・・・・・ぇ、ぁッ!ごめんなさい!もう一度お願いします!!!」
オレは焦って頭を勢いよく下げた。完全に自分の世界に入っていた。
そのせいでヒバリさんが何を言ったのか聞き逃してしまうなんて・・・・・どうしよう、殴られる・・・かな?
恐々と顔を上げると、ヒバリさんとばっちり目があう。怒ってはいないようだ。
どちらかと言えば・・・呆れてる?そんな感じだった。
長い黒髪がふわりと風で巻き上げられて、静かに揺れる。
オレの癖の強い髪も、少し風に煽られた。
「だから、“放課後に応接室に来るんだよ、良いね?”って言ったんだよ。」
「わ、分かりました!!」
まさかの呼び出しに、オレの心臓はドキドキと煩く鳴っていた。
どんな形であれ、憧れの、ヒバリさんの領域に呼ばれたのだ。
顔に出さないようにする事で精一杯だった。
「そういう訳だから、もう行きなよ。」
ヒバリさんはあれだけオレが押しても引いても、少しも動かなかった重い門を片手だけであっさりと開けてくれた。
オレ程では無いにしても、あの細い腕の何処にそんな力が・・・
「何してるの。早くしなよ。」
ちょっと不機嫌そうな声で言われた。
「す、すみません!ありがとうございます!!」
勢い良く礼をして、オレは校舎に向かって走った。
1時間目の授業はまだ始まって五分くらいしか経っていない。
「沢田綱吉…やっぱり面白い子だね。」