パラ
□涙の果てに・・・
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骸がファミリーから姿を消して一週間が経つと、様々な地域が物騒になっていった。ボンゴレの同盟ファミリーや敵対ファミリーが何者かの手によって次々と潰されていったのだ。犯人は分からない。その姿を見た物は皆、あの世の住人になっているため調べようが無いのが現実だ。だが、綱吉はただ一人、犯人に心当たりがった。考えたくも無いが、マフィア殲滅を目論むような人物を一人しか知らない。
『どうしてなんだ、骸・・・・・』
何故自分のもとを去った、何故置いて行った、如何して、どうして、ドウシテ!!!
その頃から綱吉は笑わなくなった。笑ったとしても、それは愛想笑いだったり、作った笑顔で本心からの笑みではなかった。心の底から“笑う”ということを忘れてしまった。
ある抗争の時だった。この騒がしい時期に、ボンゴレに喧嘩を売ってきたファミリーがあり、応戦していた。相手は以前から何かと敵対していたファミリー。この混乱に乗じてボンゴレを倒そうと言う魂胆であった。
『あとどれだけ倒せば・・・・・』
戦況は圧倒的に不利だった。自分以外の生き残りを探したが、見つからない。絶体絶命だった。
「うわああああああ゛あ゛!!!」
「ギャアッ!」
「何だお前ぐあぁッ!!!!!」
不意に敵陣営から叫び声が上がった。それと同時に、銃声や、骨が砕けるような音が多々響く。全てが止むと、あれだけ居た敵は全滅していた。
「こ・・・これは・・・・・ッ」
目の前の惨劇に綱吉は言葉を失う。今までのマフィアのボスと言う立場上、人の死を多々目にして来たが、これほど酷いものは見た事が無かった。呆然と立ち尽くして居ると、前方に影が差す。驚いて顔を上げると、
「む・・・く、ろ?」
骸が返り血に塗れて立っていた。
「こんにちは、綱吉君・・・貴方を抱き締めてあげたいんですが、こんな薄汚い奴等の血で汚すわけにはいかない・・・残念です。」
綱吉はその場から動けなくなっていた。骸の二色の目が綱吉をその場に縫い止めていた。
「どうして・・・こんな・・・・・」
「貴方を救うためですよ。汚らわしいマフィアを消し、醜い世界を作り出す人間共を始末してこの世を浄化すれば、貴方は汚れずに済む。貴方もこの世界で苦しんでいるのでしょう?」
だって奴等のために貴方はいつも心を痛めている・・・血で濡れた黒皮の手袋を外して、綱吉の白い頬に触れながら言う。
「だからって・・・だからってこんなの駄目だ!確かに人は業が深くて汚れてるかもしれない。でもだからって・・・」
骸を止める事が出来るのは自分しか居ないと悟った。自分にしか、この惨劇に終止符を打つことが出来ない。
「それなら僕を殺してごらんなさい、鬼ごっこです。僕が世界大戦を起こす方が先か、貴方が僕を殺す方が先か・・・」
頬から指を離して静かに話す。
「楽しみですね、綱吉・・・」
滅多に聞かないような低い声で言い、骸は去っていった。この日から、闘いは始まった。
それから後は、骸の足取りを掴むのに必死だった。相変わらず次々と消えていく他ファミリー・・・綱吉は何としても情報を得ようとした。これ以上の死者を、犠牲を出さないために。だが、どんな小さな情報も手には出来なかった。
骸相手なら仕方の無い事かもしれない。しかし、それが綱吉を焦らせた。丁度その時だ、超直感が働いたのは。イタリアの郊外に骸が現れると超直感は教えた。何の情報も無い今、綱吉が頼れるのは己しか無かった。そして、今日が最後の闘いになるのだとも感付いていた。