パラ
□春の訪れ
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凪がそこまで言ってくれるのなら・・・と勇気を振り絞ってみたが、いざ目の前にすると足がすくんでしまう。
綱吉は元々人の間を突っ切って行くようなタイプでは無いのだ。
妙に遠慮してしまっていた。
『どうしよう・・・凄く近付き辛いよ・・・・・・;;』
うんうんと1人で試行錯誤していると、話し声が聞こえてきた。
「ねぇ、六道君。その第2ボタンアタシにくれない?」
骸を取り巻いていた少女達の中の1人が言った。
「ぇ、私も欲しいッ!」
「第2ボタンじゃなくて良いから下さい!!」
それを皮切りに、次々と申し出る少女達を綱吉はぼんやり眺めていた。堂々としている少女達が羨ましかった。
出来る事なら、自分もこの思いを今すぐ打ち明けたいのに・・・でも出来なかった。
足が動かなかった。少女達からの見えない圧力で牽制されているようだった。
「駄目ですよ。生憎この制服は予約済みでしてね・・・釦1つだってあげれません。」
綱吉が動けずにいると、骸の声が耳をかすめた。
『予約・・・済み?・・・・・って事はやっぱり先輩好きな人居るんだ・・・』
冷たい氷で出来た剣か何かで心臓を射されたような感覚に支配された。
『そりゃあ・・・先輩みたいに格好良かったら恋人くらいは居るよね・・・』
これ以上骸を見ていられなかった。告白する前に失恋してしまうなんて、ついてないにも程がある。
気付けば綱吉は走り出していた。