パラ

□宝盗〜12年の想い〜
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雲雀が屋敷の扉に手をかけると、ギギー・・・と錆び付いた金具が悲鳴を上げながらゆっくりと開いた。
中は壁等が壊れて出来た隙間から光が入り込み、僅かに明るい。
部屋という部屋を隈無く探し始めると、大きな1本の廊下に繋がる部屋を発見した。
怪しく思い、神経を研ぎ澄ませると何かの・・・人に非ざるモノの気配を感じる。

『これは・・・久々に退屈せずに済みそうだね!』

廊下へ出て愛用のトンファーを取り出し先を鋭く睨む。
それとほぼ同時に、雲雀に向かって一頭の合成獣(キメラ)が飛び掛ってきた。
相手の先制攻撃を軽々と飛び避け、体勢を整える。

「君があの扉の番人・・・って事だね」

雲雀は合成獣の背後に見える扉をチラリと見遣った。

【サレ・・・ココカラサレ!】

頭に直接響くような声で唸った。
改めて合成獣を見ると、頭は立派な鬣の付いた獅子で、腕は虎、下半身は牛のようだった。
そして、尻尾代わりに何匹かの毒蛇が雲雀の方を威嚇しながら見据えている。
更に、その喉元へは人の・・・苦痛に歪んだ顔が貼り付いていた。

「咬み殺し甲斐がありそうだ・・・楽しませてくれるよね?」

合成獣の視界から一瞬で消え去り、その巨体をトンファーたった1本で吹き飛ばす。

【グァァアアア!!】

壁に叩き付けられて屋敷全体が微かに揺れた。

【グゥッ・・・トオサナイ・・・・・ココハ、ゼッタイニ・・・!!!】

爪の猛襲と噛み付いてくる蛇を防ぎ、避けながら反撃のチャンスをうかがっていた。

【アレハ・・・ワタシノモノダ!!】

合成獣が、雲雀を狙って腕を大きく振り上げると、大きな隙が出来た。それをここぞとばかりにトンファーで打つ。

【ギャアアアァァァッ!!!】

凄まじい叫び声を残して合成獣はとうとう倒れた。
ボンッと小爆発が起こり、干からびたような老人の遺体と、合成獣を作り出していたであろう動物達の死骸が散らばる。
それも僅か数十秒の事で、あっという間に白くなっていき、粉末となって風に吹き飛ばされていった。
そして、雲雀の目の前には、ただ扉へと続く廊下が広がるだけとなった。
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