小説

□お題 『ヒバツナ5題』
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群れる草食動物なんて目障りでしかないと思っていた。
だけど、あの子は何かが違う・・・


『目ざわりか、それとも・・・』


授業が始まる3分程前、ある1つの教室の様子がいつもと違った。
雲雀が教室に来ていたのだ。
雲雀が教室に来るのは珍しい事なので、クラスの全員が振り返る。
まだ休み時間だというのにおしゃべりをやめ、すごすごと席に戻っていくクラスメート達。
彼らにとって、雲雀の前で群れないようにするのは当たり前だった。
他の生徒達以上にその恐怖をたった数ヶ月で知ったのだから。
始業のチャイムが鳴り、教師が教室に入ってきた。
いつもとクラスの雰囲気が違うのを奇妙に思い、視線を一番後ろの席にうつす。
雲雀を見るなり教師の中で、すぐに謎は解消された。
だが、敢えて何も言わなかった。
授業が始まりしばらくしても、雲雀は話を聞くわけでもなく、ノートをとるでもなく、ただ窓の外を見ているだけだった。
雲雀の視線のその向こうには、体育をしている生徒達がいた。
1-A・・・綱吉達のクラスだ。
今回の授業はサッカーらしく、すでに試合は始まっていた。


綱吉は溜め息を吐きながら試合をしていた。
もともと運動が苦手なので、体育の授業なんてものを本当は受けたくなかった。
自分が加わったチームは必ず負けるとまで言われて体育が好きになる人間は、果たしているのだろうか。
綱吉も例に漏れず、体育の授業が憂鬱だった。
それでも、獄寺や山本といった友人達のおかげで『さぼる』ということは無かった。

『はぁ、どうせパス回って来ないんだろうなぁー・・・いや、回ってきても困るけど・・・』

「沢田!!ボールいったぞ!!!」

ボーっと考えていると、クラスメートの声が響いた。
ハッとして振り返ったが、時既に遅し。
ボールが背中にクリーンヒットし、盛大にこけていまった。

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