小説

□IF…
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『ぇー!?何、何が起きたの!!?』

眠っている雲雀の腕の中で綱吉は混乱していた。
今すぐこの場を離れた方がいい気がするにはするのだが、あの言葉を思い出すと動けない。
ふと視線を上にずらすと雲雀の顔に目がいった。
自分より白く端正な作りに思わず見入ってしまう。

『綺麗・・・・・だなぁ・・・』

「・・・何人の寝顔見てるの。何か言いたい事でもあるわけ?」

スッと目を明け、切れ長の黒が綱吉の姿を映し出す。
綱吉はあまりに突然の事に顔を青くした。
だが、聞かなければならない事が1つある。

「あの、雲雀さん・・・オレ何でここに居るんでしょうか;・・・それと、顔近いんですけど;;」

恐々口を開くと、雲雀が接近していた。
2人の距離はほとんど無い。
言うならば目と鼻の先だ。

「この部屋は僕の物だからね。必然的に君には僕に従ってもらうよ。」

頬にキスを1つ落とすと、綱吉は金魚のように頬を染めた。

「だから大人しく抱き枕になっていなよ。」

また1つ、今度は瞼の上にキスを落とした。綱吉は驚きに口をパクパクとさせていた。
その様はまるで空気を求めて水面上に顔を出す魚のようである。
更に強く抱き締められると、色んな意味で頭が真っ白になった。
それでも冷静に考える。
もし雲雀を少しでも知る者がこの光景を見れば、あまりの異常さに顔を真っ青に染めるだろう。
だが、ここは雲雀が療養している病室。
誰も好き好んで近付かないし、近付けさせない。そんな場所だ。
だから“もし”なんて事は絶対に無い。
そう考えると自然と綱吉の頬が綻んだ。
赤面した顔はまだまだそのままだったが。
この場に今入る事を許されているのは自分だけ。
なんだかそれが嬉しくて仕方無かった。
何故かなどと聞かれても多分答えられない。

・・・好きです・・・・・

気付いたら声に出ていた告白の言葉。
雲雀は綱吉をまじまじと見ていたが、フッと笑って言った。

「知ってるよ。」

窓から入り込んだ風が1輪の薔薇の花びらを散らしていった丁度その時、2つの影が重なった。


†END†
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