頂・捧
□ひゃくはっかい、キスして。
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【ひゃくはっかい、キスして。】
『さーん、にーい、いーち、ぜろー!』
テレビのなかのカウントダウンが最高潮に盛り上がり、そして弾けた。同時に、ごーんと低く響く鐘の音が余韻となって届く。除夜の鐘だ。
「明けましておめでとうございます、綱吉くん」
「ん。あけましておめでとう」
膝のうえに綱吉を抱え込んだまま、吐息を吹きかけるようにして骸が耳元でささやいた。
「ねぇ綱吉くん、どうして除夜の鐘って百八回撞くのか知ってます?」
「人間の煩悩が百八つだからだろ」
「そう。だからああして鐘を撞くごとに煩悩を打ち消してゆく。……でも、綱吉くん」
僕の煩悩は君で打ち消されるんですよ。
ふわ、と。唇に触れるものがある。
「ん……!」
間を空けず、温かい舌が歯茎を掠め、咥内へ入り込んできた。
「んん……っ」
鼻に抜けるうめき声が漏れる。くちづけは、長くは続かなかった。
最後に濡れた舌に上唇を柔らかく吸われ、離れてゆく。ほんの一、二分ずの出来事だった。
「む、むくろ……骸さん!い、いきなり……」