パラ
□月夜の夢
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14歳の誕生日を迎えたその日から、少年は悪夢にうなされていた。
いつもいつも、夢の中に広がるのは何処まで続いているのか分からぬ闇。
空には赤く、猫の爪を思わせるほど細い三日月が不気味に輝いている。
そんな中何者かに追われ逃げ惑い、捕らえられた所で決まって目を覚ますのだった。
『月夜の夢 T』
「うわぁっ!!!」
掛け布団を蹴り飛ばす勢いで、少年・・・沢田綱吉は目を覚ました。
『今日のは・・・なんか追ってくる人の顔が見えたような・・・』
日に日に現実味を帯びていく夢。もう何度同じような夢を見たのか綱吉には分からなかった。
綱吉にはボンゴレの血が流れていた。しかも、代々その血を持つ者は吸血鬼に狙われるという。
両親からそう告げられた時には何の話だかさっぱり分からず、悪い冗談だと思っていた。
しかし、その話を聞いた夜を境に綱吉は悪夢を見始めた。
『父さんと母さんがあんな事言うから不安になっただけだ、大丈夫。ただの夢だ。』
最初の2・3日は自分に言い聞かせて全ては夢の話だと簡単に片付けていた。だが、夢は収まるどころかどんどん激しさを増していった。
初めはただ暗い闇の中をただ必死に逃げるだけだったが、何時しか何者かに追われるようになった。
捕らえれるようになったのはほんの3日前で、その夢の進行具合がまるで何かのカウントダウンのように思えて綱吉の恐怖は日に日に募るばかりだった。
『・・・って、考えてても無駄だよな・・・学校いこっと・・・・・』
今日は金曜日・・・今日頑張れば明日は土曜日で学校はお休み。それに土曜日は前々から獄寺や山本と遊びに行く約束をしている。
前向きにいこうと綱吉は並盛中の制服に袖を通した。
考え事をしている内に相当な時間が経ったらしく、登校がギリギリなってしまった。
そんな日に限って、風紀委員が門前に立っているのを見て綱吉は自分の薄幸さに涙が出た。
「ふーん、今日は群れて無いんだね。それは良いとして君、もっと早く登校出来ないの?」
「す・・・すみません;;」
風紀委員長−雲雀恭弥−の切れ長の目で睨まれて綱吉は思わず目を逸らす。並中最恐と謳われる雲雀に捕まり、厄日としか言えない。
「まぁ、今日は群れてないからお咎めなしにしてあげるよ。」
きっとボコボコにされるのだろうと身構えていたのに、あっさりと開放されて綱吉はあ然とした。綱吉はそのままペコリと1つ頭を下げ、クラスに走って行った。
その日もなんとなくで過ぎていき、あっという間に夜になった。夜になるとまた悪夢にうなされるのかと憂鬱になる。
いっそ寝ないでやろうかと思うが、人間は睡眠が必要な生き物。ましてや、ダメダメライフを送り疲れきっている綱吉に徹夜などというものは無理だった。
溜め息を1つ吐き、ベッドに横になるとあっという間に睡魔が襲い、夢(といっても悪夢だが)の世界にいざなわれた。