パラ
□天使墜落
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“地上に巣くう悪魔、六道骸を殲滅せよ”
上から下された指令書を手に、綱吉は呆然と立ち尽くしていた。
『天使墜落』
六道骸は、天界では知らない者が居ないほど有名だった。勿論悪名が、だが。
強い力を持った悪魔の存在を恐れた天界の者達は、骸を倒すために何度も討伐隊を結成した。
しかし骸は、幾度と無く綱吉の同族、天使達を返り討ちにした。
誰も骸に敵う者は居なかった。討伐隊を結成することも、無謀な事だと分かっていた。
しかし、それをやめようとはしなかった。
いつの間にか、天界上層部では討伐隊を結成する事によって心の平静を保つようになっていた。
最早討伐隊とは名ばかりで、ただの捨て駒に過ぎないのだ。
綱吉は絶望の淵に立っていた。いつかは来ると思っていたが、こんなにも早く自分の番が回って来るとは思っていなかったからだ。
『こんなに早くオレの番が来るなんて・・・でも、もしも・・・もしもオレ達が骸を倒せれば・・・・・』
綱吉は、10000分の1の確率にかけることにした。無理な話だとは分かっていたが、そうでも思わなければ塞ぎ込んでしまいそうだった。
そして、地上を目指して綱吉は炎で出来た光り輝く翼を広げた。
この時、綱吉は知らなかった。自分が“討伐隊”としてではなく、“生贄”として骸の元へ送られたという事実を・・・・・
地上は、不気味なほどに濃い霧に蔽われていた。その霧は、手足に纏わり付いてくるように重苦しいモノだった。
だが、霧の中でも骸が住んでいるとされている城は、存在を主張するようにどうどうと建っていた。
『あれ・・・他の討伐隊の人何処だろ・・・』
先に着いている筈の討伐隊は誰も居なかった。周りを見渡しても、霧が広がるばかりだ。
それどころか、この地上に自分以外の天使が降り立った気配も無い。
そこでやっと気付いた。自分は討伐隊としてではなく、最初から捨てられたのだと。
綱吉は、その場に崩れ落ちた。絶望や悲しみで立っていられなかった。
自分の存在を全面的に否定されてしまったような感覚に陥っていた。
『オレ・・・捨てられたのかな・・・・・』
ヒラリと、1切れの紙が綱吉が着ている服のポケットから舞い落ちた。指令書だ。
綱吉は、虚ろな目でそれを見つめた。しかし、それを見た綱吉の目は、大きく見開かれた。
【骸を倒す事が出来たならば、その時は胸を張って帰って来なさい。私達は、貴方を歓迎しましょう。健闘を祈る。】
ボゥッ――
額に炎がともり、目の前に聳え立つ城を見据えた。額に炎をともすのは天使達の本気を表す状態だ。
『骸を倒せば帰れる・・・それなら・・・オレは・・・・・骸を倒さなければ死んでも死に切れない!!』
地上に着地した時に仕舞った翼を再度出現させ、骸の城へと突っ込んで行った。