パラ
□叶わぬ恋と知りながら…
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オレは今、決して叶わぬ恋をしている。その恋のお相手は・・・雲雀恭弥さん。
オレより1個年上の先輩だ。
ヒバリさんはオレの通う並盛中学校の頂点に君臨する恐怖の風紀委員長様なのだ。
自分に仇なす者達を、仕込みトンファーで叩きのめす様に、臆病なオレは恐怖を覚えるけど、それ以上にあの人に惹かれていた。
カツアゲされていた所をヒバリさんに助けてもらったのが一番の原因だと思う。
(向こうはそんなつもりじゃ無かったのだろうけど)
あの日から、オレはヒバリさんを好きになってしまった。
でも、この恋は絶対に叶わない。オレは“男子生徒(”であの人は女子生徒(・・・
一見何の問題も無いように思うだろう。でも、オレは・・・本当は女なのだ。
名前も男名で、学校へも“男子生徒(”として通っているが、オレは生物学上では間違い無く女なのだ。
初恋が同性だなんて・・・・・・なんて不毛な恋だろうか!
それでも、オレはヒバリさんに恋していた。
『叶わぬ恋と知りながら・・・』
オレ、沢田綱吉は今年の春からこの並盛中学校に通い始めた1年。
そして入学早々ダメツナが定着してしまった。
テストは入学以来赤点だらけ、運動はまるで出来ない、遅刻の数は既に2桁へ突入・・・
そんな訳で、小学校からの不名誉なあだ名を継続してしまったという訳だ。悔しい、とは思う。
でも、いくら思ったってどうにもならない事がこの世の中にはあるものだ。
勉強も、運動も、何だって出来る奴がいるから、反対に出来ない奴がいる。
上位がいるから下位がいるんだ。それでオレは単に下位に位置している、それだけなんだ。
そんな言い訳っぽい事を考えながら通学路を歩いていると、学校のチャイムが遠くから聞こえてきた。
まさかと思い、携帯を見ると、既にHRが始まっている時間だった。また遅刻だ。
今月に入って何回目かはもう忘れた。取り敢えず言える事は“ヤバい”それだけだ。
どんなに走ろうとも絶対に間に合わない事は分かっていたのに、オレの足は自然とコンクリートを蹴っていた。
学校に着くと、案の定校門は閉ざされていた。
割と全力で走ったため、小さく上下する肩を少し立ち止まって落ち着かせる。
そして門をどうにかして開けようとしてみたが、非力な身体では大きな門はビクともしなかった。
「どうしよう・・・」
困って呟く。乗り越えて行こうにも、門の高さは結構な物だ。
まず自分の体力では無理だろう・・・そうかと言って他の抜け道は無い。
(オレが知らないだけかもしれないが)
焦り始めていた。良い案は何も浮かばない。考えれば考える程、頭の中は真っ白になっていった。
「君、何してるの?」