パラ

□涙の果てに・・・
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※死ネタを含みます。苦手な方はプラウザバック。+R-12くらい?


【骸(恋人)を撃ち堕とした日 〜涙の果てに・・・〜】


乾いた大地に、涙が一粒落ちた。しかし、それはすぐに地へと染み込み、跡すら残さない。一つ、また一つと零れ落ちるが、数日間恵みの雨を知らない大地は、次々と飲み込んでいき、何も残さなかった。がくりと青年が膝をつく。手に握っていた拳銃が、ガチャリと無機質な音をたてて転がった。がくがくと震える手を、視点の定まらない目で凝視する。その手で自らの顔を覆うと、頬を濡らしていた涙で、掌がひやりとした。

『殺した・・・オレが・・・オレが・・・!!』

琥珀色の髪がはらりと落ちる。綱吉は未だに顔を覆ったままだった。彼の傍らの、先程落ちた拳銃からは、まだ薄く硝煙が上がっていた。ゆらめく煙のその向こうには、暗青色の髪が散乱している。
六道骸・・・・・綱吉の恋人だった者の亡骸だ。右胸には、小さな風穴・・・これが骸を死に至らしめた物だ。ぽっかりと右胸を穿たれて、骸は動かなくなった。
紛れも無く、綱吉が放った弾丸によって・・・体が重かった。それよりも心が重かった。足には力が入らず、立つ事さえ出来ない。

『骸・・・骸・・・・・!!』

それでも、どうしても骸の遺体(こいびと)の元に行きたくて、綱吉は這うようにして近寄った。
骸の死に顔は、殺されたと言うのにどうしてか、やけに穏やかだった。満たされた気持ちで死んでいったかのような表情だった。涙を溢しながら、震える指先で骸の頬に触れると、すでに冷たくなっている。一月前、綱吉を包み込んでくれた温もりは何処にも無い。嗚咽を漏らさないように、しっかりと引き結んでいた唇の端からは、ついに紅い紅い鮮血が滲み始めた。それでも綱吉は静かに涙を落とすだけで、声を上げようとしなかった。


骸が綱吉の元を去ったのは、一月前の事だった。その前夜、ふらりと現れた骸は、綱吉の目にはいつもと様子が少し違って映った。

「こんばんは、綱吉君。」

いつも以上に柔らかく、優しい声色で言い、ふわりと抱き締めた。

「む、骸、どうしたんだ?ってうわッ!!?」

そのまま抱き上げられて、スプリングのきいたベッドに投げられ、思わず綱吉は目を閉じた。次に目を開けた時には、既に目の前に迫った骸の顔。手も、手首を掴まれて顔の横に押さえ付けられていた。どんなに力を入れようとも、骸より数段細い体ではびくともしない。

「貴方を抱きたくなりましてね・・・」

自分のネクタイを片手で緩めながら骸が言うと、綱吉も抵抗を止めた。綱吉にとって骸は愛しい恋人だ。拒む理由が無い。

「・・・いいよ。」

骸の仕草に鼓動を早めながらも、綱吉は頷いた。それから後は、まるで壊れやすいガラス細工でも扱うかのように抱かれた。いつももそれなりに優しく綱吉を扱うのだが、その日は段違いだった。

『何か・・・骸の様子がおかしい・・・・・』

そうは思っても、骸によって的確に与えられる熱によって浮かされた身体と思考では、それ以上の事は考えられないし、行動することも出来なかった。そうやって二人きりの夜は静かに過ぎていく。そしてあっという間に時は流れ、綱吉が目覚めた時には、骸の姿は何処にも無かった。

『六道骸が姿を消した。』

起床後すぐにもたらされた情報に、目を見開かずにはいられなかった。何故?・・・その知らせは、綱吉の胸へ深く突き刺さる。同時に、骸と闘わなければならない時が来ると、頭の内の何処かで直感して苦しそうに、悲しそうに眉を顰めていた。
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