パラ

□宝盗〜12年の想い〜
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『宝盗〜12年の想い〜』


古びた屋敷の前に、1人の男が屋敷全体を眺めるようにして立っていた。
そびえ立つ屋敷は、住む者が居なくなって久しいのか、あちこちが壊れ風化している。
庭だったのであろう空間は、雑草が地面を覆い尽すかの如く生い茂り、木々も手入れされていないためか枝を伸ばしたい放題伸ばしていた。
どう見ても不気味である。
しかし、屋敷を眺める男は少しも気味悪さを感じていなかった。
彼にとって、この屋敷は興味を引くものなのだ。
どっと屋敷に吹き付ける強い風が、男の漆黒の髪を揺らした。
そして切長の、髪と揃いの黒い目をスッと細める。

『ここにはどんな宝が眠っているんだろうね・・・』

彼の名は雲雀恭弥・・・ある物を探して旅をしているトレジャーハンターだった。


雲雀がこの屋敷の噂を聞き付けたのは、近くの小さな町だった。
もともとの性格上、人が集まる場所を極端に嫌う・・・
というか群れる輩を見ると咬み殺したくなる雲雀だが、情報集めのためにはそれらを我慢して酒場等に行かなければならなかった。
その日も、厚化粧の金髪の・・・スタイルのまぁまぁ良い女が寄り付いてきた。

「ねぇ、貴方格好良いわね・・・旅の途中か何かかしら?」

女はよっぽど自分に自信があるのか、大胆に雲雀に迫る。
しかし、雲雀の方は対して質問に答えもせず、短く言った。

「何か宝の情報知らない?」
「貴方トレジャーハンターなのね・・・そうねぇ、この辺りだと東の平原にある屋敷かしら・・・・・ってちょっと!!?」

雲雀はいくらかの金貨をカウンターに置いて足早に立ち去った。
一刻も早く人が群がる所から離れたかった。
そうでもしないと、今頃酒場は跡形も無く破壊されていただろう。
後ろから女が喚く声が聞こえたが、完全に無視する。
それが数時間前の出来事である。
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