小説

□5月5日
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「綱吉、今日何の日か知ってる?」

綺麗に片付けられている部屋・・・というより、元から必要最低限の物以外に置かれていない部屋に雲雀の声が響く。
ベットに腰掛けたまま、綱吉は小首を傾げた。


『5月5日〜Happy Birth Day〜』


「ぇ・・・」

突然の質問に綱吉は困惑した。5月5日・・・一般的には子供の日、だが彼がそんな答えを求めているとは思えない。
そんな答えを出したらそれこそ噛み殺されてしまいそうだ。
必死に何の日かと思い起こしてみるが、全くと言って良い位に思い付かなかった。
頭の中をクエスチョンマークの大群が押し寄せる。
本当に何一つ思い付かなかった。

「知りません・・・;」

綱吉が恐る恐る目線を上げると、雲雀は気のせいなのか満足気に微笑んでいた。

『雲雀さんの微笑み方ってやっぱり綺麗だなぁ・・・』

「僕、今日が誕生日なんだ。」
「そうなんですかー・・・って、えー!!?」

突然告げられた誕生日発言に綱吉は声がひっくり返った。
雲雀に見とれてぼやーっとしていた視界が一気に冴える。

ぼんやりとし過ぎて思わず聞き逃してしまうところだったが、雲雀は今確かに“今日が誕生日”と言った・・・

「何で早く言ってくれなかったんですか!!?・・・言ってもらえればプレゼント用意したのに・・・」

雲雀の誕生日が5月5日だということは本当に初耳だった。
以前から誕生日はいつか聞こうと思っていたのだが、結局聞けず仕舞いだったのだ。
本人から言ってくるにしても、何も当日に言わなくても・・・というのが、今の綱吉の心情だった。

「わざと教えなかったからね。綱吉、そのままにしといて。」
「ぇ・・・?ちょ、雲雀さん!?///」

最早綱吉の頭の中からは、さっきまで渦巻いていた疑問や不満は吹き飛んでいた。
今は太ももの上に感じる重みに顔を赤らめている。
雲雀は今、綱吉の太ももの上に頭を乗せて寝ている。
世間一般に言う膝枕だ。

「君からの誕生日プレゼントは“僕の言う事を聞く”で決定だから。」

目を軽く閉じて言う雲雀に綱吉は益々顔を赤くする。
普通ここは理不尽だとか言う所なのだろうが、今の綱吉にツッコミは不可能だった。

「じゃあ、これから僕は寝るから1時間くらいは起こさないでね。」

綱吉は顔を上げず「はい」とだけ小さく答えた。
その様子を楽しそうに眺めていたが、ふいに右手で綱吉の頭を引き寄せて触れるだけのキスを落とした。

「それじゃ、おやすみ。」

綱吉は赤かった顔を更に今度はゆでだこのように赤くして放心していた。
そして雲雀の方は、満足気に眠るのであった。



+END+

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