□残暑見舞い申し上げます
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「今日も暑いな・・・いつまで残暑続くんだよ!」

勘太郎は真っ白な原稿用紙を空中に放り投げながら叫んだ。


『残暑見舞い申し上げます。』


毎年、夏の暑さには苦労している。ここまで暑いと冬が待ち遠しくなる。

「クーラー・・・扇風機でもいいからほしい・・・」
『春華は散歩、ヨーコちゃんは買い物・・・か・・・』

ガラガラ・・・今は出ている二人のことを考えていると玄関の戸が開く音がした。ヨーコか春華が帰ってきたのかと思ったが、霊力の高さからして違う。
ここまでの霊力を持つ者は勘太郎は一人しか思いつかない。部屋からそっと覗いてみて、勘太郎は溜め息をついた。

「何の用だよ、源・・・」
「こんにちは、一ノ宮先生。妖弧と鬼喰いは外出中かい?」
「そうだよ、残念だったね。まぁ、春華が居たとしても君には会わせないけどね。」

勘太郎は笑いかけながら頼光に言った。だが、目は全く笑っていない。

「じゃあ丁度いいや。今日は先生に用があったからね。」
「は?」

勘太郎には理解できなかった。一体自分に何の用があるというのだろうか。

「まさか、春華の名前を解除しろとか言うんじゃないだろうな。」
「違うよ・・・・・本当に先生は鬼喰いのことばっかりだね。・・・なんか妬けるな・・・」
「何か言った?」
「いや、別に。」

何かどんどん話がずれている。

「で!用は何なんだよ!!」

勘太郎はいい加減にしろと言わんがばかりに怒鳴った。

「今日は残暑見舞いをして貰いに来たんだ〜♪」
「・・・何で僕が残暑見舞いしなきゃいけないんだよ!!」
「というわけで、先生♪こっち来て☆」

頼光は満面の笑みで勘太郎に向かって手を差し出す。

「嫌だよ!というより僕の話聞いてた?・・・・・ってなに近づいて来てるんだよ!!」

近づいてくる頼光から逃げるために勘太郎は少しずつ後ずさっていく。
だが、この家はそんなに広くない。あっという間に壁にぶつかって追い詰めらる形になる。そしてそっと抱き寄せられる。

「はぁ〜、やっぱり落ち着く〜。先生華奢だからねぇ。つーか本当に男?」

抱き寄せられるところまでは我慢していたが、最後の一言でぶちきれた。

「僕は・・・好きでこんなナリじゃなーい。」

そしてなにやら唱え始める。

「勘太郎・・・お前何してるんだ?・・・・・というより、何で源がここに居る?」

だが、それは発動する前に帰宅した春華によって止められた。

「春華!おかえり。さみしかっ・・・」

春華の元に行こうとしたが、頼光に腕をつかまれバランスを崩す。そしてそのまま頼光の腕の中にすっぽりと収まる。

「先生、寂しくなかったでしょ?僕が一緒にいたんだから。」

触れるだけのキスを勘太郎の口にして不敵の笑みを浮かべる。

「み・・・源!なッ・・何を///」

勘太郎はもう怒るのも忘れて慌てふためいた。頼光の行動パターンがまるで読めない。

「手前ェ!源!!いい加減に勘太郎を離せ!」
「うるさいなぁ。僕は先生に残暑見舞い貰ってんだ。邪魔しないでもらえる?」

さらに強く抱き締める。しかし、いつまでも黙っている勘太郎ではなかった。

「・・・・・臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」
「・・・先生。そんなに嫌だった?」

頼光は不動金縛りをひらいと避けながら言った。

「当たり前だ!さっさと帰れ!」
「じゃあ、そろそろ帰るよ。渡辺がうるさそうだしね。それじゃ先生、残暑見舞いありがと。」

こうして頼光は一ノ宮家を去っていった。

「源・・・ぜってぇ許さねぇ・・・・・勘太郎、今度から一人で留守番するな?」
「うん・・・そうする・・・」

春華の言葉がはたして嫉妬なのか独占欲なのかはたまた両方なのか・・・それは本人しか知らない。
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