小説

□風紀委員会の内乱シリーズ
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『風紀委員会の内乱 #02』

あれは、集金の帰りだった。危険な目に遭わせたくないから綱吉は応接室に置いて来ていた。
早く帰ろうと思うと、自然と早足になる。あとはこの角を曲がればすぐに学校だ。
そこで妙な気配を感じて振り返ると、奇妙な物が僕目掛けて飛んできていた。

『バズーカ、か…?』

こっそりと僕を狙うなんて卑怯な真似をしてくれる。そいつは後で咬み殺すとして、今は目の前に迫るこれをどうにかしなければならない。
こんな事で怪我をして帰ったらあの子を困らせてしまう。
トンファーで爆風を吹き飛ばそうと回転させた。間を置かず弾が炸裂すると、痛みや熱さなどは全く無く、煙ばかりが立ち込めた。
その時、煙の向こう側に影が見えたが、すぐにそれは見えなくなる。煙が晴れると、綱吉の家で見た覚えのある子供が半泣きで僕を見ていた。
頭の端からバズーカの大きな銃口が見えている。僕と目が合うとついに泣き出し、背を向けて逃げて行った。追う気にはなれず、でも見えなくなるまで見ていた。
周りが一気に静かになる。まるで嵐が去った後のようだった。
トンファーを仕舞って角を曲がると、ロードワークに出掛ける所らしい笹川とすれ違う。

「おう、雲雀!」

そのまま相手にもせず通り過ぎようとして、声を掛けられた。急いでいる時に限ってこれだ。
だが、この男は無視すると煩い。

「何。」
「お前には兄が居たのだな!極限に驚いたぞ!!」

機嫌の悪さは驚きに一瞬で変わった。一体何の話だ。僕には兄など居ないし、聞いた事も無い。

「ちょっと、何の話。」
「?さっきまでここで沢田がお前の帰りを待っていたのだがな、お前にそっくりな男が来て応接室に連れて行ったぞ。て、おい!雲雀!!!」

そこまで聞いて走り出した。笹川が何か叫んでいるが無視だ。綱吉が得体のしれない何かと一緒に居ると言うだけで居ても立っても居られなくなった。

『綱吉!』

応接室はまだ遠い。


オレは応接室のソファーの上で、大分体格差のある男に抱きかかえられていた。男の腕にすっぽりと納まってしまう自分の体に涙が出そうだ。

「それでヒバリさん…オレに何の御用でしょうか……」

と言っても、オレを放さないのは良く知った風紀委員長様ではなく、その十年後の姿をしたあの人だ。

「君のおかげで僕の時代の綱吉が戻って来てね…お礼を言いに来たんだ。」

スーツの袖からするりと伸びた手が俺の頭を撫でる。優しい手付きだった。

「ヒバリさん…」
「綱吉ッ!!」
「ヒバリさんッ!!?」

急に扉が開いて、オレ達の時代のヒバリさんが慌てた様子で入ってきた。
驚いて大人ヒバリさん・・・この言い方いい加減ややこしくなってきたな…まぁ良いけど。
とにかく、大人ヒバリさんのスーツにしがみ付いてしまったのがいけなかった。ピクリ…ヒバリさんの眉間に皺が寄る。
間違いなく怒ってるよ!!って言うか何この状況!バズーカの故障!!?

「ねぇ綱吉…そいつ、誰?」

地を這うような声がした。下手したら大人ヒバリさんよりも声が低い。
大人ヒバリさんの腕の中から恐る恐る見上げると、ヒバリさんが見るからに不機嫌そうな顔をしていた。
嫌だなぁ…トンファーなんか出しちゃって!

「僕かい?僕は十年後の君だよ。」

動揺するオレを他所に大人ヒバリさんが答える。多少高さが違うとは言え、同じ声に挟まれるのは変な気分だ。

「ふーん、そう。でもこの子は僕のモノなんだから、早く元の時代に帰りなよ。十年後にも綱吉はちゃんと居るんだろう?」
「勿論、この子のおかげでね。だけど、まだ帰らないよ。この子をモノにするまでは。」
「ワォ、こんな欲張りが自分の未来の姿だと思うとぞっとするよ。」

オレを挟んでのやり取りは続く。逃げ出したい。ほんと、死ぬ気で……

「そうかい?君だって十年後の綱吉を見たら手を出さずにはいられないはずだよ。」
「……。」
「残念、そろそろ時間かな…またね、綱吉。」

額にキスして、大人ヒバリさんは派手な音と煙を上げて消えた。またねって…また来る気ですか、大人ヒバリさん。
大人ヒバリさんが居なくなっても、オレが放されることはなかった。
今度はヒバリさんに強く抱き締められている。ちょっと力が強過ぎて息苦しい。

「ちょっ、ヒバリさッ……くる、し…」
「あの男…次会ったら咬み殺す!!!」
「咬み殺すって、未来のヒバリさん自信なんですよ!?」
「関係ないよ。綱吉に手を出す者は誰であろうと許さない。」

ヒバリさんにとっては、未来の自分でさえ敵のようだ。
その後暫く、オレは抱き締められ続けた。書類整理をする時でさえ、膝にオレを乗せてやっていた。
足が痺れないのだろうかといらない心配をしてしまう。
ヒバリさんの行動に、だんだんと慣らされてきた今日この頃。


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