頂・捧

□守りたいのは
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雲雀が目を開けると、白い世界に居た。数秒経って、その白が医務室の物だと理解する。

『綱吉を庇って撃たれたんだっけ…』

未だにほんの少しもやがかかる頭で右を向けば、白い包帯の巻かれた肩が目に入った。
まだまだ激痛を伴う傷だが、綱吉を守ってできた傷だというだけで誇らしい。
だが、同時に罪悪感も感じていた。自分が撃たれた事で、綱吉の心が傷付いてしまったのもまた事実だ。

『泣いてたな…泣かせたくなかったのに…』

思い出されるのは意識が失くなる直前に見た真っ赤に染まる己の肩と、それを見て瞳を潤ませる彼女の姿…同時に早く笑顔が見たいと思ってしまった。
ようやく意識がはっきりして、腹の辺りが重い事に雲雀は気付く。
更に左手にも、そっと包み込まれるような感覚がある。
今まで右を向いていた頭をその方向へ向けて、雲雀はわずかに目を見張った。
白いシーツの上に散らばる琥珀色の柔らかな髪。自分の手を握ったまま放さない、色白で小さな手の平。温かな体温。
そして腹の上に乗ったあどけなさを残す寝顔…全て綱吉の物だ。
雲雀が昏睡している間も、ずっと手を握って離さなかった。
どれだけ泣いたのか、頬に薄く涙の痕が残っている。
ぐっすりと眠っていた。おまけに何日睡眠を取っていなかったのか、うっすらと隈まで出来てしまっている。
起こさない方が良いと判断して、雲雀は声もかけずに寝顔を見ていた。

「ん…ッ…きょーやさん?」

ゆっくりと、髪と同色の透き通った目が開かれる。

「目、覚めたんですね!!?」

雲雀と目が合った瞬間、飛び起きる綱吉。

「良かったぁ……」

雲雀の無事を確認するや否やポロリと涙が溢れる。
右肩を庇いながらゆっくりと体を起こすと、自由のきく左手で静かに泣く綱吉を抱き締めた。

「泣かないでよ、綱吉。僕は君の笑った顔が見たいんだ。」

自分のすぐ近くまで引き寄せ、涙が流れる頬に口付ける。
一緒に少し塩っぱい雫も舐め取ってやると、みるみるうちに綱吉の頬は赤く染まっていく。
涙はもう止まっていた。そして、ふにゃりと笑って見せる。
泣き出しそうな笑顔であったが、心からの笑顔だった。

「やっぱり、綱吉は笑顔が一番だよ。」
「改めて言われると恥ずかしいですね///」

雲雀が動かなくて良いように、綱吉はベットに座ってピタリと寄り添う。

「綱吉。」

頭上から心地良い低音が響く。何事かと上向くと、後頭部に左手が添えられる。

「どうしたんですか、恭弥さん?」
「目、閉じな。」
「え…」

急に言われて戸惑うが、すぐに雲雀の意図を理解して目蓋を降ろした。
何年経っても慣れないのか耳まで真っ赤だ。その様を見てクスリと笑い、柔らかな唇を食む。
当然のように、口付けは深さを増していった。


†END†

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