パラ
□宝盗〜12年の想い〜
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「もしかしたら、恭弥様にまで厄災がふりかかるかもしれないって考えたら怖くて、恐くて・・・」
綱吉の体は小刻に震えていた。
だから雲雀は薄茶色の髪を手で梳きながら優しく言ってやった。
「でも、僕の屋敷にあった時はそんな事無かったけど?」
「そういえばそうですね・・・何でだろ・・・・・・」
綱吉は震えを止めて、疑問符を浮かべながら首を傾げる。
今までの持ち主は散々な目に遭ってきたが、考えてみれば雲雀家では一度も奇妙な現象が起らなかった。
謎が深まり、綱吉はうんうんと唸る。
「何でか・・・教えてあげようか?」
「え?知ってるんですか!?」
「君が盗まれてから調べたからね・・・」
雲雀はおもむろに大空の剣を鞘から取り出した。
刃がキラリと澄んだ光を放つ。
普通刃は鈍い光を放つのだが、大空の剣のそれは、本当に鋼鉄で出来ているのかと疑うくらいに美しい光を纏っていた。
「君は雲雀家のために創られた剣なんだよ。」
「それって・・・!」
綱吉は目を丸くして雲雀を見上げる。
雲雀はその可愛らしい表情を満足そうに見下ろし、続ける。
「元々君には、雲雀家の者以外の手に渡った時に、相手を呪うように出来てるんだ。だから心配すること無いよ。僕は間違い無く雲雀恭弥で、君を所有する資格を持っているからね。」
だから君が嫌がっても離してあげない・・・耳元で言うと、綱吉はくすぐったそうに身をよじる。
「嫌じゃないですよ、マスタぁー・・・///」
顔を赤らめているが、しっかりと雲雀を見つめて言う。
「当然でしょ。あと呼び方、また戻ってるよ。」
「あれ・・・;;」
『まぁ悪い気はしないんだけどね・・・』
コロコロと表情を変えていく綱吉を眺めながら、雲雀は思っていた。
口に出したりはしないが。
「綱吉、そろそろ行こうか。」
「ぇ?ぁー屋敷に帰るんですね。」
雲雀が手を差し出して手短に言うと、その手を握り返して立ち上がる。
「いや、帰らないよ。2度と帰らないつもりで出てきたし。」
あっさりと言われて少々面食らっていた綱吉だったが、すぐに苦笑いを浮かべた。
「マスタ、じゃなかった・・・恭弥様のおうせのままに・・・・・」
長年離れ離れになっていた1人と“1人”は今、同じ道を共に歩み始めた。
【END】
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