パラ

□宝盗〜12年の想い〜
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外へ出ると、荒れ果てた広野が広がっていた。
夕日で、辺りはすっかり鮮やかなオレンジの世界だ。

「そういえば恭弥様・・・」

古びた屋敷を振り返り、綱吉が言った。

「何?」

何事かと、雲雀は綱吉へ視線を移す。
それと同時に強い風が吹き、綱吉の体は大きくよろめく。
雲雀の腕の中に閉じ込められる事によって支えられた綱吉は、そのままの状態で続けた。

「オレが雲雀家から盗み出されて12年・・・この屋敷に買われたのが2年前・・・空白の10年間、一体オレはどうなっていたと思いますか?」

綱吉は背後に広がるボロボロな屋敷を見て言った。
とてもではないが、2年そこらの傷みとは考え辛い程風化してしまっている。
どちらかと言うと、手入れする者が居なくなって30年以上経っていそうなくらいの傷み様だ。

「オレには、呪いがかけられてるんです・・・・・恭弥様には話しておかなきゃと思って・・・」
「・・・綱吉?」

綱吉の表情が曇ったのを雲雀は見逃さなかった。
心配そうに綱吉を見る。

「オレを盗んだ人達は、依頼された貴族の元へ送り届けた帰りに事故に遭い全員死亡・・・その貴族も1年もしないうちに強盗に殺されて、オレも盗み出されました・・・」

雲雀は黙って聞いていた。自然と綱吉を抱く腕に力が篭る。

「それから後も、色んな人の手を転々としました・・・どの人も悲惨な最期を迎えました。」
「それでこの屋敷の人間の手に渡ったってこと?」

コクリと小さく頷き続ける。

「この屋敷の主は今までの人達と違っていました・・・欲が強すぎたんです・・・」

大空の剣に心を奪われた屋敷の主は、自分が死んで剣を手放してしまう事を惜しんだらしく、封印の鎖をかけた。
そのせいで普通より激しく呪われ、合成獣と化してしまったのだ。
それでも剣を諦めきれず、屋敷に意図的に侵入してきた者は勿論、迷い込んでしまった者の命さえ奪っていった。
全ては、己の宝を死守するために・・・

「その後、オレにかけられた呪いで屋敷は異常なスピードで廃れていきました。これでもこの屋敷・・・」

2年前まで、今からは想像出来ないくらい綺麗だったんですよ?と綱吉は辛そうに笑った。
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