パラ

□宝盗〜12年の想い〜
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綱吉が宿っている大空の剣は、もともと雲雀家が所有していた宝剣だった。
雲雀が産まれる以前からあったその剣が、精霊となって・・・綱吉として雲雀の前に現れたのが、雲雀が5歳の時だった。
小さい頃から極端に人と行動する、つまり群れる事が嫌いだった雲雀が初めて共に居て良いと思える存在だった。
綱吉の方もまだ精霊としては未熟な存在だったため、雲雀を「マスター」として頼りきっていた。
お互い、暖かくて楽しい時間をすごしていた。
ところでこの宝剣、誰が作ったかなどと言う記述は一切残っていないが、その美しさは皆が羨んだ。
そして美しさ故、剣を狙う者も少なくはなく、12年前・・・ついに剣は盗み出されてしまったのだ。
その時、雲雀は弱冠8歳・・・侵入者から剣を守るにはあまりにも幼すぎた。

「あの日からずっと探してたんだ・・・」

このためだけに雲雀は家も捨て、地位も捨ててトレジャーハンターとなった。
長い間、綱吉を探し続けた。何度も偽の情報を掴まされた。
だが今、ようやく綱吉にたどり着いたのだ。

「マスター・・・オレ・・・」
「綱吉、前みたいに名前で呼んでよ」
「ぇ、でもマスター・・・」
「恭弥」
「き・・・恭弥様、オレ・・・もしかしたら恭弥様に2度と会えないんじゃないかと思ってました・・・でも、恭弥様はオレを見つけ出してくれた!それが本当に嬉しくて・・・」

とめどなく溢れる涙を丁寧に舌で舐めとりながら、綱吉を落ち着かそうと背を撫でる。
しかし、綱吉は涙腺が壊れてしまったかのように、一向に泣き止む気配が無い。
仕方なく雲雀は綱吉の顎を掴み上向かせた。
雲雀と目が合うと同時に重ねられる唇・・・綱吉は泣くことも忘れて目を見開いていた。

「きょっ、恭弥様!!?///」
「綱吉、もう泣かないで。早くここから出よう?」

暫く放心していたが、コクリと1つ頷いて、綱吉は目尻を己の手で拭った。

「うん、いい子だね。」

頭をゆっくりと撫で、腕を引っ張り上げて立たせると、フラつきながらも2本の足で地を踏みしめた。
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