パラ

□宝盗〜12年の想い〜
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木製の扉には鍵がかかっていたが、雲雀はそれを簡単に蹴破った。
部屋の中は薄暗かったが、行動する事に支障が無い程度のものだ。
ほとんど物が無く、ガランとした部屋だった。
しかし、明らかにおかしなモノがある。
階段だ、それも地下へと続いている。
階段の先は真っ暗のようで、何も見えない。
仕方なくランプへ火をともし、雲雀は漆黒の闇の中へ降り立つ。
ランプで照らし出された部屋はごく普通なものだった。
特にこれと言って高価そうな物も何も無い。

『はずれなわけ?・・・もっとさっきの奴咬み殺しておけば良かった・・・』

期待があっさりと外れてしまい、深い溜め息を吐く。
これ以上この場に居る必要を感じなくなった雲雀は、クルリと踵を返して僅かに目を見張った。
階段の奥にある壁に、立派な(ツルギ)が何重にもなる鎖に戒められていたのだ。

『僕としたことが見落とす所だったよ・・・』

歩み寄ってみて、雲雀は更に驚く事になった。
剣の中心に大きな宝玉が付いていて、美しい空色をしている。
と言うより、それ自体が空を小型化したもののようだった。
澄んだ空色の中を、小さな雲がゆったりと移動する。

「やっと見つけた・・・」

その剣は間違い無く雲雀が探し続けていたモノだった。
雲雀が手を触れると、弱々しく宝玉が光り、一人の少年が姿を現した。彼はこの剣に宿る精霊だ。
白い肌に明るい茶色の髪がよく映えていたが、その手足は剣と同じように鎖で戒められ、意識を失っている。
雲雀は柄にも無く興奮している自分を押さえてトンファーで剣に巻き付いた鎖を叩き割った。
少年を拘束していた鎖も一緒に弾け飛ぶ。
そして、自由の身となった剣を床に置いてやると、空色の宝玉が今度は力強く光り始めた。
その光に呼応するように、少年はゆっくりと目を開ける。
髪と同色の明るい茶をした瞳が雲雀の姿をとらえた。

「ぁ・・・・・マス・・・ター?」
「綱吉!迎えに来たんだよ、遅くなったね・・・」

自分よりも一回りも二回りも小さな体を抱き締めて、雲雀は安堵していた。
綱吉の方も涙を流しながら、雲雀におとなしく抱き締められる。

「マスター・・・会いた、かった・・・・・!」

すがりつきながら泣きじゃくる綱吉の背を軽く叩きあやす。

「綱吉・・・もう離したりしないから・・・・・僕が死ぬ時は君も一緒に壊すから!!」

綱吉は泣きながらも嬉しそうに頷いた。
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