ざっそうすとーりー。

□Don't like
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誰かが言った。


「君の名前は?」

「好きな物は?」

「誕生日は?」

「好きな事は?」

「友達の名前は?」


自分は答えた。


「知らない。」

「分からない。」


誰かは自分を奇妙なものを見たような顔で呟いた。


「気味が悪いな。」


気味が、悪い。
なんとなく恐ろしい
なんとなく気持ちが悪い。
そんな曖昧な意味だった気がする。

聞こえていないと思ったのか、記憶の中の朧げな誰かはまた問う。


「じゃあ、嫌いなものは?」


自分は答えた。
自分は応えた。


「両親。」
「クラスメイト。」
「世界。」


誰かが顔を歪ませた。
誰もが顔を歪ませた。
悲しみに。
嫌悪に。
憎悪に。

それは成長するに連れて表立った。
中学生になって、暴力をふるわるようになった。
それには教師と言われる者も加わって自分を嘲笑っていた気がする。
そして現在、高校生。


「漸く…終わる。」


全校生徒が屋上に。
街の住人達が下に。


「戻って来いよ、なあ…っ!!」


顔だけは覚えていた男。
前線に立って自分を殴っていた。


「ごめんなさい、ちゃんと謝るから…!!」


暴力が始まった時にその場に居合わせていた女。
いつだったか自分の前で頬を叩いたりと自虐的な行動をみせていた。


「何故。」


周りの人間は許しを乞う。
その姿はあまりにも色のない、
そしてあまりに滑稽な景色だった。


「自分がここから飛び降りる事に何の不満がある。」


この世に生を受けてから一度もない感情が込み上げた。


「死んでしまえ、と言われたから死ぬだけのことだ。」


今までただ暴力を受け。
今までただ命令を受け。
今までただその通りに動いてきた。


「今まで自分が息をしていたのはな。
死ぬという事柄を命令されたことがなかったからにすぎない。」


誰かは嫌いな存在の為に自分の手を汚すのは嫌だと言った。


「自分は思考を手に入れた。」


そしてそれをただ一つの抵抗に使う。


冷たい冬の風が、頬を掠める。
風を感じながら、言葉と行動を同時に起こした。


「―お前ら全員、人殺しになっちまえ。」


ぐしゃりと音がして、意識がなくなった。


Don't like
(それが“ ”の)
(最後の言葉)

 

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