ちぇりーぶろっさむ

□除霊のお手伝い!
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とある夕暮れ時、少女は呟いた。

『―斯くて刃は振り下ろされる、何てね。』

その意味を知るは、少女のみ。

「琉威先輩、何か言ったか?」
『いや、何にも?』
「そうか?」

現在、午後7時13分金曜日。

「何だァ!?
いきなり出てきて山ちゃん蹴倒しといてその上俺らに此処どけだァ!?
何考えてんだテメェ?
死ぬか?!
あァ!?」
『気が短いし、血の気が多いね。』

霞乃琉威、17歳。
髪の色、茶髪。
瞳の色、薄茶。
職業、高校生兼請負人っ!
なーんて脳内であまり意味のない自己紹介。
隣で髪を掻きあげる少年は
黒崎一護、15歳で私の後輩なのです。

「何とか言えこの…『五月蠅いなぁーっ』おプッ

ドガガッ!

向かってきた男を一護と息ピッタリに蹴り倒す。
別に私が合わせた訳でもない。

「ああッ!」
「トシりんがやられた!!」

うわぁあの顔でトシりんとか…。
思わず吹き出しそうになるのをこらえる。

「な…何だか知らんがヤベェ…ッ
あんな理不尽な暴力見たことねぇ…!」
「あいつら絶対アレだ…ッ
あんなのとやったら確実に殺られる…!」
「ギャーギャーうるせぇ!!
お前ら全員アレ見ろ!!」

…理不尽って、裏世界の頃に比べたらこんなの普通なのになぁ。
一護より理不尽なのなんて普通にいるのに、と思えば一番に頭に浮かぶのは赤を身に纏いシニカルに笑う彼女だった。
そう思いながら一護の指さした方を見る。
そこには倒れたワインの空き瓶を花瓶代わりに供えられた花。

『はい、第1問っ♪
アレは一体なんでしょーかっ!』

《スマイル0円、ただしブラックスマイル》みたいなっ
…駄目だいつぞやのいーちゃんの一般人な友達の真似は出来ないや。
何で潤ちゃんみたいに上手くいかないかな…。

『えっと、じゃあそこのちょっと変な所にピアスしてるおにーさんっ』
「あ…あの、こないだここで死んだ餓鬼へのお供え物…。」
「大正解!!」
「ミッちゃーん!!」

指をさすのは行儀が悪いので手のひらで示す。
そして答えた瞬間一護が蹴りを繰り出す。

「問2!!!」

ミッちゃんと呼ばれた男に駆け寄る男達。
それに目もくれず、次の質問を告げる一護。

「じゃあどうしてあの花瓶は…、
倒れてるんでしょうか?」
「そ…それは…」
「俺らがスケボーして倒しちゃった…から…?」
『そっかぁー。』

うふふ、と殺人鬼でファミリーコンプレックスな殺人鬼とその妹の様な笑いを零す。
…まぁ、それはさておき。
高校生兼請負人な僕の可愛い可愛い後輩君、黒崎一護青少年。
彼の特技、それは―

「『それじゃコイツ/この子に謝んなきゃなァ!?/ねぇ?」』

幽霊が見えることだ。
彼の指している方向にはツインテールでワンピースを着た頭が血濡れの少女。
男たちは声にならない悲鳴を出して謝罪を叫びながら逃げていく。

「ふ―…
こんだけ脅しときゃもうここには寄りつかんだろ。」
『ごめんね、こんな風に使っちゃって。』
「ううん。
あの人たち追っ払ってってお願いしたのあたしだもん、このぐらい協力しなきゃ。」

幽霊少女とほのぼのな会話を繰り広げる彼がとある少年漫画の主人公だと気付いたのはつい最近だ。
一護と出会ったのが4月下旬、今は5月初旬。
長いように感じた短い時間の中で僕や人識は一護と仲の良い友人になった。
(仲の良い、と言っても裏世界ズマンションには連れていっていないが。)
そんな事を思ううちに一護と少女のお話は終わったらしい。

『話し終わったんならそろそろいっかなー?』
「ああ、頼む。」

因みに僕は所謂魂葬と呼ばれる事を出来る。
それも自分の獲物、《疾風強襲(ソニックサクリフィス)》で。
積音(つみね)ちゃんもすっごいなぁ、僕の斬魄刀についての資料があったからって皆の獲物全部魂葬できるようにしちゃうなんて。
ああ、積音ちゃんっていうのは僕と同じ世界の人で戯言世界では罪口に転生していた。
因みに名字しか変わってない。
まあ元から積音ちゃんはあんまりにも私に過保護で改造スタンガンやら某風紀委員をモデルにした仕込みトンファーやらを作っては護身用に渡してきたりしたし、困ることはなかったみたいだが。
そう思いながら今は判子型になっている疾風強襲を少女の額に押すと同時にふ、と見えなくなる。

「よし、今回もありがとな。
琉威先輩。」
『んーん、可愛い可愛い一護クンの為なら別に良いよ。
ていうか成仏させとかないといーちゃんのきっちり被害が出ちゃうからね、私の為でもあるんだし。』

そう言いながら判子型のままの疾風強襲をポケットの中に仕舞う。

「いや、でもありがとうな。」
『いーえ、じゃあ私は帰るね。』
「おー、井伊先輩たちによろしくな!」

私は振り返らずに歩く。
そして完全に一護が見えなくなった頃、公園に目を向けるとシーソーに座る二人の鏡同士。
除霊のお手伝い!
(お、琉威!)
(お疲れ様、琉威ちゃん。)
(お疲れ様って言われても私、魂葬しかしてないけどね。)
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