青の祓魔師

□儚いもの
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鉄の匂い。
人間の血の匂い。
しかし魅惑的な悪魔の香りが入り混じる。

この血の匂いはただ一人。

胸のざわつきを抑えるには
無理がありすぎた。

「……燐…ッ!!」

口から出るのは愛しき弟の名。



血の匂いが濃くなる。

そして、

…精液の匂い。



無残にも放り出された
白い身体。赤い背。


一歩踏み出せずに一瞬立ち止まる…


「り…ん…ッ」


駆け寄り、抱き上げようと
触れようとした手が止まる。


同じ行為をしたではないか。
私は…。私が…ッ!!



その時だった。


「兄に触れないでください。
触れる権利など…貴方には無い。」


後頭部に突きつけられた銃。
奥村雪男。

「このまま兄が目を覚まして、
貴方といたのなら、
兄が壊れてしまう。

もう僕が手当てします。
貴方は今すぐ立ち去って下さい。」


震えた声。怒りに満ちた。
このまま去ると私は燐を
見捨てることになるのか?

だがこれは私のせいで…


考えている内に、
雪男は燐を抱えて立ち上がった。


「手当てを…頼みます…」


俯いたまま発した言葉は、
立ち去る雪男に届いたのか
分からぬまま闇へと吸い込まれた。




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