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□私のお兄ちゃん
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私のお兄ちゃん高尾和成はバスケが上手くて人間関係も上手、おまけに顔も良い。
勉強はそこそこだと聞いたが。
とにかく妹の私とは比べ物にならないのだ。
「いってきまーす」
そう言って朝早くに出かけていった兄を確認して私はリビングに降りた。
「おはよう、琴音」
「・・・・・・はよ」
母はもうスーツに着替えていてすぐ仕事に行くようだった。
「洗い物とかやっとくから仕事行っていいよ、母さん」
私がそういうと、悪いわね。と言って母さんはすぐ家を出て行った。
そして私は、母が作ってくれた朝ご飯・・・と言ってもトーストとお味噌汁というなんとも微妙なチョイスだが、それをTVを見ながら飲み込んだ。
ふと兄の座っている席に目を向けると、そこには兄のお弁当があったのだ。
「・・・え、嘘・・・・」
お弁当箱の包みが兄のものだからきっと兄のものなのだろう。
というか、この家に弁当を持っていくのは私と兄くらいなんだから。
兄のお弁当箱は亜母さんが忙しい中作ったものでも、綺麗に包んであって、中身も手を抜いたりしない、すごく美味しい。
今頃兄は困っているだろうか。
お弁当がなくて、今日はどうしようなんて友人と話しているのだろうか。
少し、兄にはざまあみろと思ったが、それを良しとしないのは、母譲りの頑固な良心だった。
「母さんに頼まれたってことにすればいっか・・・」
そう言って少し食べるペースを早め、お味噌城を飲み干した後、私は自分の鞄に兄のお弁当を入れた。
「いってきます」
いつもより大きな歩幅で、兄の学校に向かった。