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□私のお兄ちゃん
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幸い、兄の学校は私の中学校の2駅前にあったため、それほどいつもと道のりは変わらなかった。
以前母に教えてもらったことがあったから、大体の場所は知っている。
兄の学校、秀徳高校の近くになると黒のセーラーや学ランと言う、生徒がたくさん見えてきた。
そんな中、私の中学校のブレザーは結構目立ち、こちらを見られてはヒソヒソと小さな話し声が聞こえた。
「・・・っていうか、別にお弁当がなくても高校には学食ってのがあるんだよね・・・・・」
私はそこまで考えにいたらず、ここまで来てしまったのだ。
兄には、何ていわれるだろうか。
"なんで来てんだよ、さっさと帰れよ"
なんて冷たくあしらわれてしまうのだろうか。それとも
"別に弁当いらないんだけど・・・"と困った表情を
されてしまうのだろうか。
正直、兄とは最近口をきかない。
昔は結構、いやかなり私は兄が好きだった。
しかし、年を重ねるごとに兄との才能の差は開いていくだけだった。
別に私だって、すごく運動が出来ないわけじゃないし、全然頭が悪いわけじゃない。
しかし、兄は特別なのだ。
バスケというスポーツを通じて、たくさんの仲間と出会い、そして高校ではとても有名な選手でいるらしい。
そんな兄と帰宅部の私では、全然何もかもが違うのだ。
だから私が中学に上がったころには、兄とは全然口を利かなくなった。
きっと私は、兄に嫉妬していたんだと思う。
兄もきっとそんな私に呆れて、もうどうでも良いと思っているに違いない。
でも、こうして今も兄のお弁当を兄に届けようとしているってことは、きっとまだ私は兄を完全に嫌いに慣れてないんだと思う。
でも、こんな事を考えてたって今の状況はどうにもならない。
どう転んでも兄に嫌がられる結果しか浮かばない私は、校門の前でウロウロしていた。
そこに学校中から声が聞こえた。
キュッキュッという音に、ボールをバウンドさせる音。
そして―・・・・
「真ちゃん!」
兄が誰かを呼ぶ声。
小さな音だが鮮明に聞こえてくる。
これは、すぐ近くの体育館から聞こえてくるものだった。
そこに兄がいる。
私は、少し迷ったがここまで来たら「これ母さんから」と言って帰ってきてやろうと思い、私は体育館へと向かった。