番外編

□将来の夢はなんですか?
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――ズダダダダダダダダッ


バぁンッ


「ひゃっほーい!クリスマスだぜーぃ!」


ドアが壊れてしまいそうな音を響かせ、飛び込んできた泰斗がヒラリと床に舞い降りた。


「うるさい泰斗。」


まるでバレエの様な綺麗な着地だがその前の音が五月蝿過ぎる。
けたたましい駆け足による地響きで机や棚がガタガタと鳴る程だからノートに書いていた文字が歪んでしまった。ありえなさそうな事だが残念ながら本気で現実である。古い校舎なだけあってガタが来ているのだろうか。
あーあ、と歪んでしまったその部分を消しゴムに掛けようとしたら、泰斗がどこから持ち出したのかリリリリリンッとベルを鳴らした。


「クリスマスだぜ!!」


両手に持つそのベルで二刀流の剣士の様に決めポーズをしている。

サンタの帽子まで被っちゃって、

おめでたい奴。








― 将来の夢は何ですか? ―









「おい日下部、保健室なんだからあんま騒ぐな。」


バインダーを肩乗せた幸大が奥から出てきた。


「松下センセ!」


リンリンッ

見てみて!と言うように片手をピンと伸ばしてまたベルを鳴らす。


「なんだ、クリスマスパーティーでもすんのか?」


「そ!クラスの奴等と忘年会も兼ねてやんの!」


ニシシッと嬉しそうに笑う泰斗。
呆れながも幸大は一緒にベルを鳴らし始めた。背負っていたリュックから次から次へとベルが出てくる。もう勉強に集中するのは無理だなと、教科書を机に放り出して泰斗と幸大に向き直った。


「うわっ」


お、悠先輩だ。


「な、んだこれ?」


「ヘーイせんぱぁい!めうぃーくりぃすやーん!」


「あー、ハイハイ。メリクリさん。」


「わ、ぶ、」


先輩はベルが並んだ床に驚きながらも、泰斗の変な言い回しを軽やかにかわし、そのめでたいサンタ帽子をズっポリ被せて口元まで封印した。さすがだ。

ちょっと前に初のご対面をしてから、泰斗は悠先輩に懐きまくりで、

…うん、ちょっとジェラシー。


「ぶは、ちょ、ひど、オレ空気不足になるじゃんよっ先輩!」


「お前の場合ちと足りないくらいがちょーどイイだろ。」


「え、うっそ、足りてて丁度だし!むしろ足りないし!!」


「ハイハイ。」

適当にあしらいながら鞄をベッドの上に放って、避けることなく、ちゃんと泰斗の横に座り込んで話をうんうんと聞いている先輩。

適当なのになんか優しいんだよな、先輩。

「で、なんの曲なわけ?」

「んーと、きーぃよーしーこーのよーるー♪ほーしーはぁー♪」

「や、きよしこの夜だけでわかるし。歌わんで良し。」

「うぶ、」

再び口元まで帽子を下げられてしまう泰斗。

うん、もっとやっちゃえ。


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