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□無口な恋のキューピッド
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「や、やだよこんな所で、やめっ、翔!」


「じゃあ、ここじゃないトコならいいんだ?」


「そーいう事じゃないだろ?!」


「じゃあ何?」


「だから、み、みみみ、―――ッる」


「あ?耳?」


「ひ、あっちが、舐めるな、くっッぅ…、」




あー、もう!


いいから早く押し倒しとけ!


行け行けゴーゴー!!ひゅー!


「だ、から…」


「ん?」


「っッ直樹が見てるっ、つってんだろこのバカぁ!!」



ズゴッ



と、鈍い音が聞こえた。

あれはかなり痛そう。

顔を真っ赤に染めた満(ミツ)君が翔(ショウ)君に頭突きをかましたのだ。


えー?


ちょーいい所だったのに。

いつばれたんだろう?


「バレバレだっつーの!『どうして?』って言いたげに首傾げるな!!」


ズビシ!と、オレを指差しながら睨み付ける満君。


うん、かわいい可愛い。


ぱしゃり。


「っ?!、ななな、写メんなってんだよ!!このバカ!!」


え?


大丈夫。可愛く撮れたよ?


ほら、


おもむろにケータイの画面を満君に見せてあげた。


頭突きを食らってぐったりとした翔君を支えながら必死に指を指してる可愛い満君がばっちり撮れた。


オレ、ぐっじょぶ。


真上からのアングルだからさらに最高だ。

あとで送ってあげよう。


更に真っ赤になって固まった満君にバイバイと手を振ると、頭を突っ込んでいた窓から抜け出した。

教室の壁の上に一連となって並ぶように取り付けられた窓から脚立を使って覗いてたのだ。

あそこから覗けば大抵バレないのだけれど、満君には見つかってしまった。


あぁ、残念。

かわいかったから、まあいっか。


いそいそとmy脚立を下りると、うんせと両手で持ち上げる。


「ちょ、待て!くそ直樹ぃーッッ!!」


やだよ満君。


待てと言われて待てるほど、
オレはいい子じゃないもんね。


いしし、と堪えきれない笑みを廊下に響かせて、オレはその場を後にした。



「……へぇ。」



その背後に、人影があった事にも気付かないままで。



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