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□なぁ、とっとと白状してくれよ。
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部活中に必ず一度は掛かるこの一声。




「おい!長谷川ぁ!!」




木陰に座り込んで涼んでいた俺はその声に顔を上げた。

声を掛けたソイツの後ろに、丁度太陽があって、俺の目に突き刺さる。

俺の視線と“奴”の視線が一瞬交じり合うと、俺は眩しさに目を細め、すぐに視線を外した。


「…なんだよ。」


「今日こそ俺は、お前に勝ぁつ!!」


バットの先を俺に向け、睨みつけるように奴は叫んだ。


(…毎度毎度、うるさい奴。)


本当に、コイツはいつもこれだ。


木漏れ日から漏れるわずかな日差しさえ暑いと感じる。


汗の匂いと砂の匂いが入り交じ合う。

その匂いもあってか、脳みそが焼ける様な気さえする。ただでさえ暑さを感じるのに、さらにコイツの無駄に燃え上がる闘志の「熱さ」がオレをうんざりさせる。

毎回毎回付き合わされる俺の身にもなってほしい。


敵ならまだしも、チームメイトなんだから。


「はぁ。」と、いつもの様にため息をつくと、立ち上がって尻についた砂を叩くと、奴に背を向けて歩き始めた。


「なっ、まだ俺の話は終わってない!!」


…終わっても終わらなくても、本当は俺は勝負なんかしたくないんだよ。


すると、奴が俺を追いかけて目の前に回り込み、道を塞いだ。

真っ直ぐな視線が俺を射抜く。


「勝負しろ。」



…勝負勝負と毎日飽きもせず、よくやるもんだ。


コイツは、俺の球が打てない。

ずっ、とだ。



部活や自習練している時、
俺がボールを握っている時、

奴は必ず勝負を持ちかけてくる。


合宿も勿論そうだと分かりきってはいたが、四六字中この闘志メラメラ視線を浴びるのだ。

悔しいのは解るが、そんなんじゃ逃れたいと思うのはしょうがないだろ。


やはり、一番手っ取り早いのは、さっさと勝負してやる事しかないのか。

ため息が再び口からこぼれた。



すると、

いつの間に取ってきたのか、グローブを胸板にボスッと押し付けられる。

よく手に馴染んだ、俺のグローブ。


(やるしかないのか…。)


俺は、依然として「闘志メラメラ」な“奴”を見据えると軽く息をつき

中に入れておいた球を右手に落として、グローブに左手を突っ込んだ。




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