物語の法則

□お見合い!
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「あの…ご趣味は…?」

緊張しているせいか、微かに声が震える。それを相手が察知したのか、ニコニコしながら和らげようと趣味についていろいろな事を話している。

「ワンコのやつ…ほんまに大丈夫やろか…」

佐野が心配そうにワンコを茂みから見つめている。

「大丈夫ですわ、佐野君。昨日あんなに練習したんですもの、きっと成功しますわ」

隣で鈴子が佐野と同様、茂みのなかで犬丸を見つめる。今は大人にとって重要な1日である。一斉一代の大舞台に犬丸は立たされているのだ。

そう、お見合いである。

「では、犬丸さんの特技は…」

――よっしゃ、来たで!

「は、はい。特技はリンゴを素手で割ることです」

「リンゴを…素手で?」

「はい。あらかじめリンゴを持って来たのですが…ってあれ?」

カバンの中をガサガサとあさる。

「まさかワンコ…」

―――リンゴ持って来るのを忘れたんか?

「ない!?ない!?なーい!!」

慌てる犬丸を見て、相手はクスクスと笑った。

「あの…すみません。緊張しすぎて忘れてしまったみたいです…」

顔を真っ赤に火照らせ、ますます小さくなる犬丸。もうこの際、ワンコが本名でもいいくらいだ。




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