おはなし

□最初の一歩(折虎)
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好きです


と告白したのは3ヶ月前


俺も好きだよ


と言われた時は夢じゃないかと思った


あれから週に2〜3度 虎徹さんの家にお邪魔するようになった


若いんだからたくさん食えよ

と手料理を振る舞ってくれる

酔って眠ってしまった虎徹さんをベッドに運び
抱きしめながら眠る


毎回同じことの繰り返し


無防備な唇 首筋 鎖骨に欲情しそうになるのを抑える


もしかしたら
僕の『好き』と虎徹さんの『好き』は違うのかもしれない

そう思うようになった



そして今日もいつもと同じようにリビングで虎徹さんが料理を作っているのを待っている


キッチンにいる虎徹さんの様子を見ようとキッチンに向かってみる

『どした?イワン 腹へったか?もうちょっとだからな』

そう言ってニカっと笑う

『何か手伝えることはないですか?』
『ん〜そうだなぁ じゃあワイングラス出しといてくれるか?』
『ワイン…ですか?』
『あぁ ちょっといいワイン買ったんだ 一緒に飲もうぜ』

お酒はなんでも飲めるみたいだけど、この家でワインなんて珍しい

そう思いながらグラスを用意する


『他になにかありますか?』
『じゃ、できたの運んで』
『はい』


今日も日本料理だ
他のヒーローたちには日本かぶれと言われるけど虎徹さんはこうやって日本料理を作ってくれる

簡単なやつしかできない

と虎徹さんは言うけど僕には充分すぎる


ダイニングのテーブルに料理を並べ終え座っていると虎徹さんがワインを手にしてきた

『これこれ』
そう言って渡されたけど僕はワインはわからない

『これがいいワインなんですか?』
『ラベルよく見てみろよ』
『!…これって』
『イワンの生まれた年のだろ?』
『はい!』
『だからさ 一緒に飲みたくてさ』
『虎徹さん…』
『と言うわりにワインに合うメニューじゃないけどな』
照れたように頭をかく虎徹さんを見て涙ぐんでしまう

うれしい…

『ば…泣くなよ ほら食え残すなよ』
『はい!』

食事を始めるが…
箸を持つ手
咀嚼する口
飲み込む喉

どれもがいやらしく見えてしまう

『イワン?どした?食べないのか?』
『いえ いただきます』

と、いつも必ず食卓に並ぶものがあった

『これ いつも作ってくれますね おいしくて僕大好きです』
『ん?あぁ肉じゃがか………イワンが…言ったから…』
『えっ?僕が?なんて?』
『はじめてうちでメシ食った時に 『これすごくおいしい これ好きです』…って』
俯きながら言う虎徹さんは耳まで真っ赤になってる

『それでいつもこれ作ってくれるんですか?』

ガタっと椅子を鳴らし立ち上がると虎徹さんの後に行き背中から抱きしめた


『イワン?』
『虎徹さん』
『ん?』
『大好きです』
抱きしめる腕に力をこめた

『イワン…ちょっ…離して…』
『ダメです 離しません』
耳の後に唇をつけた

虎徹さんはビクっとして

『イワン…?』

と振り返ったところで唇を重ねた

唇を重ねただけのキスだけど心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしてる

唇が離れると
『イワン?』
見上げてくる虎徹さんを見てとんでもないことをしたと思った

『すいません!つい…』
『つい?イワンは『つい』でキスするのか?』
『いえ違います!虎徹さんが好きだから…』
『じゃあそれでいいだろ あやまんなよ』
『虎徹さん…』
『なんだよ』
『もう1回いいですか』

返事を待たずにキスをした…ら、こぶしで頭を叩かれた

『イタっ』
『ばか!調子にのんな!メシ冷めんだろ 早く食え』
『はい』

また向かい合って食べはじめた




大丈夫
僕の『好き』と虎徹さんの『好き』は同じだった







20110723
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