白雪王子

□小さなお家
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彼は丁度、靴紐を結んでいる。

生まれて初めて出来た友達。

もう一生出来ることのない兄。


会ったばかりなので優しくしてくれたし、自分を守ってくれた。

もしかしたら犠牲だって払っているのかもしれない。

とにかく彼には感謝してもしきれないほどである。

彼と離れるのは寂しいが、帰ってこないことを願うしかない。

とても複雑な気持ちだった。


「坊ちゃん、そんな浮かない顔すんなよっ。」

「ごめん。
なんか、もう会えないって考えると寂しくて…。」

「何言ってんだぁ?
時間があったらまた会いに来るさ。」


そう言うと頭を撫でてくれた。

やはり彼の手はたくましく暖かい。

だがなかなか前向きには考えられなかった。


もし彼になにかあったら…。

色々なことが頭をよぎる。

見かねたクリストは軽く微笑み、立ち上がった。


「また帰ってくる。
俺を信じてくれ、坊ちゃん。」

「…っ!!」

「兄弟の約束だ。なっ?ほら…。」


拳を作ると差し出してきた。

わけも分からず自分も拳を作ると、クリストは拳と拳をぶつけた。

そしてポカンとしている自分に、いつもの明るい笑顔を向ける。


「これが男同士の約束の交わし方だ。」

「うん…。
絶対、絶対約束だからねっ…!!」


寂しさが溢れ、我慢出来なくなり思わず抱きしめてしまった。

いきなりだったので驚いた様子だったが、なだめるように優しく抱きしめ返してくれた。

こんな2人のやり取りを一歩離れて見ていたアランも呆れたように微笑んだ。



「ヴァイス君、そろそろ彼を行かせてあげなさい。」

「あっ…、ごめんクリスト。」



また自己中心的なことをしてしまったと思い、慌てて離れた。

クリストも苦笑いをしている。


「お、俺は全然いいんだけどよぉ。
いつまでもこうしてる訳にもいかねぇからなぁ…。
じゃあ、ちょっくら行ってくるわ。
アランさん、坊ちゃんをよろしく頼みます。」

「任せてください。
クリスト君も気をつけて。」

「はい、それじゃ。」


彼は軽く手を振ると後ろを振り向かず、ただ前に歩き出す。

一方自分は彼が見えなくなっても大きく手を降り続けた。

無事であるように願いを込めてただ降り続けた。


「ヴァイス君、そろそろ家の中へ入りましょう。」


アランがぽんっと肩に手をのせた。

名残惜しいが、手を降り続けるわけにもいかない。

肩を押されながら後ろを気にしながらも家の中へ入った。
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