白雪王子

□小さなお家
2ページ/4ページ

「そういえば、私はアランと言います。
お二人はどうしてここに?」

「えっとー…。それは…。」


クリストが言葉を濁らせるのも無理はないと思った。

だが、代わりに説明する事も出来ない。

しかしクリストは意を決して、
父様の命令のことからここに来るまでの事を丁寧に説明し始める。

アランは最初は驚きの表情を隠せなかったが、最後まで真剣に聞いてくれた。

もちろん自分もちゃんと聞いたが、疑問点は一つも解決されずに終わってしまった。



「なるほど…。
それでヴァイス君は他にもありますが、今は帰る家が無くて困っていると。」

「はい…。」

「すまねぇ、俺のせいで…。」


「クリスト君のせいではありませんよ。
私が思うに、むしろ君で良かったと思います。
彼の正義感がなければ本当にどうなっていたか分かりません。
とりあえずヴァイス君はここに居なさい。」

「「えっ?」」


予想外の反応で思わずクリストと顔を見合わせてしまった。

アランは微笑み、自分の答えを待っている。


正直まだ父様のことを信じていた。

家に帰ることは簡単だろう。

しかしクリストの話が本当なら、自分が帰った所でどうなるのだろうか?

クリストも危ない目に合ってしまうだろう。

しかし、今でも父様は心配してくれているかもしれない…。


迷い俯いている自分に見かねたアランはまた優しく微笑みかけた。


「では、君の答えが出るまでここに居なさい。」

「でも…。」

「私も一人になって寂しかっんです。
クリスト君は家族が心配しているでしょうから、一旦村に帰りなさい。
もしかしたら王からあなたを捕まえる命令が出ているかもしれません。
もし兵士達がいたらまたここへ戻ってきなさい。」


アランの的確な考察と気遣いに納得し、心の中の霧が少し晴れた気がした。

それと同時に自分の事で頭がいっぱいになっていたため、クリストのことを全然考えていなかった自分を悔いた。


「ごめんなさい、クリスト。
僕自分の事ばっかり考えて…。」

「そんな事はねぇよ、坊ちゃん。
じゃあ俺しばらく離れるけど気をつけろよな。」


そう言い頭を撫でてくれた。

彼の手は厚く大きく力強く、そして不思議と安心した気持ちになる。

朝食も食べ終わり、少し時間が経ってからクリストは出る支度を始めた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ