白雪王子

□朝食
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父様の隣に立っているクリストに目をやるとどちらからともなく目があった。

クリストは浅くお辞儀をしてみせる。

村一番の狩人というわりにはまだ若く、

体型も特別というほど筋肉がついているわけではなかったが、

やはり一般男性と比べると多少は引き締まっていた。

愛想も良く、少し不器用そうだが誰からも厚い信頼をもつような印象だ。

一言でいえば“お兄さん”そんな言葉が似合うような男である。


だが、僕には一つ問題があった。



「・・・分かりました、父様。
 クリストさんも遠い所から、わざわざありがとうございます。」

「いっいや、とんでもないです。」

「クリストくん、窮屈な思いをさせて悪かったね。
 もう下がってくれてかまわない。」

「はっ、はい。」


クリストは執事に案内されながら部屋から出て行った。

部屋を出て行くときも、少しぎこちない動きである、


やはり彼のような人にとってこういう場所は窮屈な場所であるのだろう。

ならば少し悪い気にさせてしまった。

彼を待たせないためにも食べるスピードを速めようとするが、

なかなか進まない。


これから動物を殺す・・・。


そう考えると気が気ではなかった。

城外に出ることをあまり許されなかったためか、

運動はあまり得意な方ではない。

だから自分が俊敏に動き回る動物を捕らえられるかと考えたら難しいだろう。

いや、それ以前に引き金を引くことが出来るかどうかだ。


僕には到底無理だ。



「ヴァイス、どうしたんだい?」

「あの、父様・・・。やはり僕には無理です。
 動物を殺すなんてできません。」


父様は一瞬驚いたようで目を丸くしたが、そのあとすぐ笑い出した。


「お前らしいな。
 良いだろう。では動物について詳しく説明してもらったらどうだ?
 文字で得る知識よりずっと良いだろう。」

「ありがとうございます!!
 では、さっそく行ってまいりますね!!」


まさかの返答に胸を躍らせ、さっさと朝食を済ませた。

飛び出るように部屋を出るとそこにはクリストがまだ強張った表情で座っていた。

「すいません、遅くなってしまって・・・。
 もう朝食も済ませたので準備万端です。」


「あっ、そうですか。それじゃあ行きましょう。」


そして二人で城の薔薇園を通り、静かな森へ出た。
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