白雪王子

□小さなお家
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良い匂いが辺りにたちこめ、誘われるかのように起きた。

天井、ベッド、シーツ、掛け布団、周りの風景。

あらゆるものがいつもと違った。

そこで昨日のことを思い出す。

自分はクリストに父様の命令で森に連れられて…。

はっきりと覚えているのがここだけだった。

いや、覚えているが状況が把握出来なかったのである。


父様はどうして僕に…?

目的は?

そもそも原因は?


色々疑問が浮かんだ。

状況整理と眠気と闘いながらボーッとしているとクリストが目を覚ました。

大きく伸びをしながらあくびをし、眠気眼をこすると彼もしばらくボーっとした様子だった。


「あぁ、そうか・・・。
 坊ちゃん?ってあぁ、起きてたか。」

「おはよう、クリスト。」

「良い匂いがすんなぁー・・・。
 もしかして家主さんが何かつくってんのか?」

「そうかもしれないね。
 あ、僕達勝手に寝ちゃったんだ!謝りに行かないと・・・。」

「そういやそうだった!
 坊ちゃん行くぞ!!」


ベットから降り、階段を上から様子を伺う。

家主と思われる人は大きめな鍋をかき混ぜていた。

机には3人分の食器がならんでいるので、おそらく自分達の分も作ってくれたのであろう。


ベットを勝手に借りて起こさず寝かしてくれた人なので悪い人ではないと思う。

安心して階段を下りると、それに気付き家主は後ろを振り返った。

白髪と眼鏡が朝日を浴びてキラキラを光り、笑顔も一層輝いてみえる。


「おや、もう起きましたか。
 おはようございます。」

「お、おはようございます。
 すいません、勝手に人の家入ったあげくベットもお借りしてしまって・・・。」

「全然構いませんよ。
 さっ、もうすぐでスープが出来上がるので座っててください。」


家主はスープを器用な手つきで皿へ移し始めた。

自分達も言葉に甘え、テーブルにつく。


しかし椅子も机も妙に小さかった。

椅子が7つあるのに男の人が3人座って少し余裕があるぐらいの大きさのテーブルである。

テーブルが小さいため、もちろん椅子も小さい。


クリストも座るのに一生懸命である。

家主はスープを運んでいたが、彼の姿に思わず笑ってしまった。


「ははっ、小さくてすいませんね。」

「あ、いえ・・・。
 それより朝食も用意してもらって・・・。」

「本当に気にしないでください。
さぁ、冷めないうちに召し上がってください。」


最後に自分のスープを置くと、席に着いた。

遠慮がちに、手を合わせ「いただきます。」と呟く。
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