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□希望の光
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あー、だるい。だるすぎる。俺は今周期の真っ只中にいる。他の編集部のみなさんも目の下に隈が出来ている。もちろん俺もだ。
だからそんな事で手を休める事は許されない。
そしてガタッと椅子を引く音が聞こえて
「小野寺!」
と、高野さんが立ち上がり俺に近づいてくる。
「何…ですか?」
「企画書だ企画書!そして原稿!早くしろ!締め切り過ぎてんだよ、作家は!お前は!どうした!」
俺の机をバンバンと叩き鼓膜が破れそうな大声で言う高野さん。
高野さんは中学の時に少しだけ付き合った事がある。
少しだけ。
そして今部下と上司という立場で再会をし、今に至るのだが、それとこれとは別の問題になってくる。
「企画書はもうすぐできますけど……でも先生携帯も家にも通じなくて!」
「よし、行くぞ」
「どこにですか?」
高野さんが鞄とコートを手にする。俺もつられて用意する。
「作家の家だ。お前馬鹿か」
「なっ……!そ、そんなの当たり前じゃないですか。分かってます。今行こうと思ってた所ですよ!」
「あっそ」
あまりにも呆気ない納得の仕方にいらつきを覚えるが気にしないことにする。
「じゃ、行ってきます」
そして床に倒れている木佐さんを避け、廊下に出た。
「待て、俺も行く」
「何でですか」
「一緒にいたいから」
思考停止。
なんでこの人は恥ずかしい台詞をサラっと言えるのか不思議でたまらない。
俺は思わず俯く。
「な?律」
「知りませんよ!」
どうか、この思いを伝えられるように。
この人が居たら疲れなんて吹っ飛ぶから。