ソファの周囲に散らばった自分の服を拾い集めていると、いきなり後ろから雄一に抱きしめられた。
「も、離せって! 学校行かなきゃいけないんだからっ」
「ダメだ、行かせない…」
「何言ってんだよ? とにかく離せって」
雄一の腕の中で拓が暴れると、腕に込められた力は より一層強くなり、拓は完全に動きを封じられてしまった。
「雄一! 俺だって、責任を担ってるんだよ。無断欠勤なんて――」
「学校になら朝イチに、体調不良で休むって電話したぞ」
「ハァ? なんで、そんな嘘…」
雄一の言葉に動きを止めて、腕の中で振り返ると、拓の肩口に顎を乗せた雄一の顔が至近距離にあった。
「…拓を、この部屋から出したくないから」
抑揚の無い声音で そう言った雄一が腕の力を込めてくる。
拓は、不意に言いようの無い不安を感じて、その腕の中から逃れようともがいた。
「何…言ってんだよ。 とにかく、俺、今からでも学校行くから――」
「行かせないって言ってるだろ!」
突然、大声で怒鳴られ、拓の体がビクリと竦む。
(雄一、様子が変? なんか、いつもと違う…)
雄一の腕の中で拓が小さくもがくと、やはり、そうさせまいと掻き抱いてくる。
いつもと様子の違う雄一に、拓はそれ以上抵抗するのを止めてみたけれど、雄一の腕の力が緩むコトは無かった。
「出勤するだけだから…話は、また今度すればいいだろ?」
至って普段通りになるように気をつけながら拓が言うと、すぐさま嫌だ≠ニ返された。