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□『 すくーる でいず 〜 シナモンとネクタイ〜 』 H
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「な…に?」

「望んでもいないサラリーマン教師なんてやってるから、お前、ダメになるんだ」

 望んでもいないサラリーマン教師。
 偶然とはいえ、たった今、自分がそう思った通りの評し方をされ、拓は唇を噛みしめた。
 結局、誰の目にも そう映っていたのだ。
 そう言えば、以前も 誰かに、やる気もないのに教師をやってるのは生活のためか、と聞かれたコトがあった。 あれは誰だったろう?

「俺、ダメになってる、のかな?」

「あぁ、やりたくも無い仕事 無理してやってるから、お前の透明感無くなって来てる。 生活の為だとしても、教師に向かねーよ、お前」

 返す言葉も無く 押し黙っていると、雄一が拓を見下ろしたまま言った。

「俺、来春に今の会社から独立するんだ」

「独立って、勤めて まだ3年だろ? いくら実力がモノをいう業界でも無謀じゃないのか?」

 あまりにも突然で予想外な雄一の言葉に、拓は驚いて聞いた。
 そんな拓を見て、雄一は片方の口角を上げて笑った。 その笑顔に雄一の自信の程が見える。

「一人じゃないからな。 うちの大学の先輩で、掛居 隆一郎って人 知ってるか?」

「掛居 隆一郎って、映像クリエーターの?」

 雄一の言った名前には確かに聞き覚えがあった。

(在学期間は被っていないけど、うちの大学出身の有名人なんだから名前くらいは知ってる…確か、写真学科卒じゃなかったかな?)

 そう考えながら 拓は、時折 雑誌などで見る記事に付いている写真を思い出す。
 長身の美丈夫で、俳優だと言っても通りそうな美形だった。

「仕事やコンぺで何度か顔を合わせたコトがあったんだけど、共同経営を持ちかけられたんだ」

「共同経営…」

「あぁ、掛居さんはCF担当で、俺が紙媒体のCM担当でって――」

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